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2022.09.09

NISA非課税枠「年間300万円」が現実味 課題は、制度の複雑さ

馬渕磨理子の今日の気になる数値

日本の家計金融資産2000兆円のうち、その半分以上が預金や現金で保有されている。米国では20年間で家計金融資産が3.4倍、英国では2.3倍になっているが、日本では1.4倍。

家計が保有する金融資産を拡大していくために「貯蓄から投資」へのシフトはまったなしだ。これを進めるために、NISAの非課税枠や期間の拡充は以前から要望が多かったのだが、それが現実味を帯びてきた。

8月31日、金融庁のNISA(少額投資非課税制度)に関する税制改正要望事項が発表されたのだ。

若年層の投資後押しに


要望案が実現すると、従来の3つのNISA「一般NISA」「積み立てNISA」「ジュニアNISA」が1本化されて「総合NISA」に変わり、未成年者を含む全世代が利用可能となる。さらに「非課税期間を無期限」「非課税枠を拡大」という提案も盛り込まれた。

現状、「一般NISA」は非課税で年120万円まで5年間投資でき、「積み立てNISA」は非課税で年40万円まで20年間投資できる。今回のNISA制度に関する要望事項の中では一般NISAの年間投資枠を120万円から240万円へ、積み立てNISAは40万円から60万円へ引き上げが記載された。さらに、2つの制度を併用可能とすることで、年間投資枠の合計を300万円とする案が示されている。

年間投資枠が一気に300万円に跳ね上がり、かつ恒久化されるのであれば、腰を据えた長期的な資産形成が可能になるというわけだ。税制優遇が受けられる期間が長ければ長いほど良いため、若年層の投資を後押しするだろう。積み立てNISAが年間60万円に拡大されれば、月々の積み立て額は5万円になる。

NISAの非課税保有期間を無期限化し制度実施期間を恒久化すると、生きている限り毎年新たな非課税枠が設定されることになり、累計の投資額は青天井になる。

しかし、改革案では累計投資額に2000万円の上限を設けるとしている。理由は、NISAが富裕層を優遇するものではなく、中間層の資産形成のためにあるから、というものだ。

NISAの参考となるのが、英国のISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)だ。1999年に英国民の貯蓄率の向上を目的として導入され、今では、成人人口の約半数がISA口座を保有している。累計投資額の上限はなく富裕層の利用を促すものとなっている。
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文=馬渕磨理子 編集=露原直人

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