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2022.09.08

画像ジェネレーター「Stable Diffusion」が評価額10億ドルで資金調達へ

Getty Images

人工知能(AI)を用いた画像ジェネレーター「Stable Diffusion」を使えば、ゴッホが描いたようなビヨンセの肖像画や、18世紀の日本画家・北斎のスタイルで描くサイバーパンクの街並みを、数秒で形にできる。8月に無償公開されたばかりのStable Diffusionは、「DALL-E 2」や「Midjourney」と並ぶ人気の画像ジェネレーターとして知られ、インターネットを席巻している。

このツールの開発元の「Stability AI」は、投資家から1億ドルを調達する話し合いを進めていると、事情に詳しい3人の関係者が述べている。投資会社のCoatueは、ロンドンに拠点を置く同社の評価額を5億ドルとする取引に最初の関心を示した。その後、Lightspeed Venture Partnersが、最大10億ドル(約1440億円)の評価額で投資するための交渉に入ったと関係者は述べている。

Stability AIは、以前、SAFEノート(転換社債の進化形)で少なくとも1000万ドルを、最大1億ドルの評価額で調達していた模様だ。同社の資金の多くは、元ヘッジファンドマネジャーである創業者でCEOのエマド・モスタク(Emad Mostaque)から直接調達されていた。

Stability AIの基盤技術は、オープンソースであり無料で利用できる。関係筋によると今のところ、同社は明確なビジネスモデルを確立していない。しかし、モスタクは先月、機械学習エンジニアでYouTubeのパーソナリティでもあるYannic Kilcherの番組で、「政府や有力機関」とすでに提携を結んでいると語った。

「我々は大規模な取引を交渉しており、他の多くの赤字の企業とは異なり、すぐに収益化できる」と彼は述べていた。Stable Diffusionの最初のバージョンのトレーニングのコストは、わずか60万ドルだったという。



バングラデシュ出身の39歳


バングラデシュ出身で英国で育った39歳のモスタクは、2005年にオックスフォード大学で数学とコンピューターサイエンスの修士号を取得し、13年間、英国のヘッジファンドで働いた。2019年、貧困にあえぐ人々のテクノロジーコストを削減することを目的としたスタートアップ、Symmitreeを立ち上げたが、LinkedInのプロフィールによると、1年で事業を停止した。

モスタクはその後、オープンソースのAIプロジェクトを構築することをミッションに、2020年末にStability AIを設立した。同社のウェブサイトによると、画像ジェネレーターは、同社の幅広いツールの1つに過ぎず、他のオープンソースのプロジェクトには、言語、音声、生物学のツールが含まれている。

Stable Diffusionは、同じくCoatueが支援するビデオ編集の新興企業RunwayMLと、ルートヴィヒ・マキシミリアン大学ミュンヘンの研究者との共同開発によるもので、同社のプロジェクトの中でも群を抜いて話題を呼んでいる。今年に入ってから画像ジェネレーターは大きな注目を集めており、OpenAIのDALL-E 2や、独立系研究所Midjourneyが開発したツールが知られている。グーグルも5月に「Imagen」を発表したが、一般には公開されていない。

モスタクと彼のチームは、既存の技術は画像ジェネレーターが生み出すものの一部に過ぎないと述べている。将来的には、フォトリアリズムや動画、アニメーションを劇的に向上させるような用途も考えられる。
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編集=上田裕資

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