埼玉の消滅可能性都市をリモートワーカーが救う? LACという暮らし方

秩父市と横瀬町にまたがる武甲山

コロナ禍でリモートワークが当たり前になり、都心を離れて自然の中でワーケージョンを楽しむ人や、地方移住をする人も増えた。そんな中、新しい選択肢として、観光でもなく移住でもない「少しだけ住んでみたい」という要望に応える、「LAC(Living Anywhere Commons)」がじわじわと広まってきている。

LACの特徴は、コミュニティ型の宿泊施設であること。各施設に人と人をつなげる役割のコミュニティマネージャーがいて、他の宿泊者や地域住民とコミュニケーションを取りながら生活ができる。自宅でのリモートワークの孤独さにストレスを感じていた人も、コミュニティの中で働くことができて、仕事もプライベートも楽しめると好評だ。

このLACの運営に2017年から力を入れているのが不動産情報サービスなどを手掛けるLIFULL。地方創生事業の一貫として、廃校や旧民家など遊休施設を再利用する形で、全国に44拠点を展開している(9月5日時点)。基本プランは月額2万7500円で、全国の施設に泊まり放題。ホテルや賃貸住宅を借りることを思えば破格の値段だ。

5月には埼玉県横瀬町に新たなLACをオープン。横瀬町とJAちちぶと「地域活性化に関する連携協定」を締結し、JAちちぶ横瀬支店として営業していた建物をリノベーションして活用している。


元JAちちぶ横瀬支店の建物を活用

まずは「中心地づくり」を


横瀬町は、豊かな自然が魅力の秩父エリアに属する。秩父エリアは、コロナ前までは年間で900万人以上の観光客が訪れ、コロナ禍でも80万人ほどが観光に訪れる人気観光地だが、横瀬町は人口8000人を下回る消滅可能性都市でもある。

そのため富田能成町長は、人口減少を喫緊の課題とし、多様性を実現する「カラフルタウン」を掲げてまちづくりに取り組んでいる。2016年には、町に人や事業やアイデアを呼び込むことを目的に、プロジェクト誘致の仕組みとして官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げ。実証実験に至ったものも含め5年で100以上の採択をしている。

よこらぼを通して、関係人口の拡大や、若年層の町への流入が少しずつ実現してきたため、その流れを深化させるべく、次に力を入れているのが町の「中心地づくり」だ。その中核を担っているのがLAC横瀬である。


LAC横瀬

「駅や役場から近く、町民会館や小学校もある中心地エリアの形成を進めてきたのですが、このエリアの中心にあったJAが支店統合の流れでなくなることになり、もぬけの空になってしまうということがわかって。そこでその場所を利活用できないかと考えました」(富田町長)
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文=田中友梨

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