開発から製造まで約1年、ベールに包まれていた「Nothing Phone(1)」。この7月、英国をはじめ40以上の国と地域で先行発売された。果たして、成熟の壁に停滞する携帯電話市場に風穴を開けることができるのか? 待望の日本発売を機に、カール・ペイが来日。Forbesの取材に答えた。
───日本、そして世界でのPhone(1)の反応は?
スマートフォンは現在、世界で年間約15億台が販売される一大産業となっていますが、そのスマートフォンは大企業が製造し非常に似通った製品群になっています。毎年発売される新機種も代わり映えしない「退屈な業界」になってしまいました。そこに、これまでとは違うデザイン性の優れた遊び心のある新しい製品が登場したのです。世界中のユーザーが私たちの製品に注目しているのは、そういう理由からだと思います。売り上げも好調です。最も注力している市場は、イギリス、ドイツ、そしてインドで、多くの需要があると見ています。
Nothing Phone(1)
───価格は実質7万円弱と消費者にとって非常に魅力的です。価格以外で売れ行きが好調な理由は?
製品開発のアプローチがまず大手とは違います。大手メーカーは、マーケティングデータを重視していますが、私たちは市場データよりも、私たちの「直感」に従って製品づくりをしています。つまり、自分たちが欲しいと思うものしか作らないということです。
カメラの機能がいい例です。通常は背面に3、4個のカメラが付いています。1個が性能の良いカメラで、残りの3個は普通のものですが、消費者は、カメラの台数が多ければ多いほど性能がいいと刷り込まれてしまっています。私だったら、性能の良いカメラが2つだけでいい。どういうスマートフォンが欲しいか自分自身に問いかけながら、製品を作っているのです。一消費者の立場に立って自分たちの欲しい製品を作っていることが、結果的に受け入れられているのだと思います。
また、今のスマートフォンは作りが同じで、表は大きな画面、背面は何もありません。私たちは背面を工夫しました。900個以上のLEDライトをつけて、着信先やアプリの通知、充電状況を光の点滅具合でわかる設計にしたのです。例えば、机の上に電話を置いていても、点滅している位置を見れば、誰からの連絡かわかる仕組みです。そうした斬新な試みが受け入れられているのだと思います。背面はまだ改善の余地があります。将来的に、Uberの配達がどこにいるのか、点滅によってわかるようにすることも可能になるかもしれません。
───背面がスケルトンという斬新なデザインが特徴のPhone(1)ですが、デザインはストックホルムを拠点とするTeenage EngineeringTMと共同開発しています。同社を共同設立者として迎い入れた理由は?
当初、デザイナーは、有名なグッチといったファッションブランドのクリエーターを頭に描いていたんです。私の友人がTeenage EngineeringTMと会って話すべきだと紹介してくれたんですが、聞いたこともない会社だったんで乗り気がしなかったのです。ですが、創業者でCEOのエスパーと昨年の9月末に会って、30分話しただけでお互いに意気投合し、共同設立者として仲間になってもらうことにしたのです。