経済・社会

2022.09.16 06:30

米国の戦略石油備蓄、1984年以降の最低水準にまで減少


SPRと政治の関係


バイデン大統領は2022年3月31日、石油・ガソリン価格の高騰を抑えるための試みとして、SPRから1日あたり原油100万バレルを6カ月にわたって放出すると発表した。これはかなりの量だ。

米国は1日あたり1200万バレルの原油を生産しており、ここに100万バレルが追加されることで、米国の全供給量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以前のピークである1300万バレルに再び並んだ(SPRを切り崩した結果なので、もちろん持続可能なものではないが)。

SPRの縮小は、結局のところ政治的判断だ。二酸化炭素排出量削減の重要性を説いてきたバイデン政権が、一方では石油の供給を増やし、石油価格を下げ、石油の需要を(そして二酸化炭素排出量を)高水準に保とうとしている。

バイデン政権が二酸化炭素排出削減に取り組んでいるとはいっても、ガソリン価格の高騰は、現職議員の選挙での敗北につながりかねない。だからこそ彼らは、排出削減の重要目標とは矛盾すると知りながら、ガソリン価格の安定化を試みている。

バイデン大統領の就任以来、SPRの備蓄量は、6億4000万バレルから4億5000万バレルにまで減少した。この傾向は近年一貫して見られてきたものだ。歴史的に、SPRの備蓄量は共和党政権では増加し、民主党政権では減少する傾向にあり、1980年以降こうしたパターンが続いている。

クリントン元大統領とオバマ元大統領は、いずれも選挙の時期に、ガソリン価格を安定化させるためSPRを利用した。共和党の大統領は、(ドナルド・トランプを除き)SPRを増加させた。トランプ前大統領の任期中、SPRは約10%減少している。

バイデン大統領は、「2023年度以降を目処」にしたSPRの再補充計画を発表している。筆者の考えでは、計画の実施は2024年の大統領選以降にずれ込むだろう。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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