米国の戦略石油備蓄、1984年以降の最低水準にまで減少

Photo by Brandon Bell/Getty Images

米国の戦略石油備蓄(SPR)とは何か。2016年以降、現在まで続いているSPRの減少は何を意味するのか。さらに、2022年に入って起こったSPRの急減にはどんな影響があるのか。以下、こうしたテーマについて論じていこう。

SPRの基礎


米国議会は1975年12月、戦略石油備蓄(SPR)の設立を決定した。1973年にOPECが石油禁輸措置を敷いた結果、ガソリンスタンドに長蛇の列ができたことがまだ記憶に新しい頃だった。SPRを定めた法律は、禁輸措置によって生じたような「エネルギー供給の深刻な中断による悪影響を軽減する」ことを目的としていた。

米国政府は、時間をかけて石油備蓄を構築した。2010年のピーク時には、備蓄量は7億2660万バレルに達した。1984年12月以来、備蓄水準が4億5000万バレルを下回ったことはなかった──今日までは。

SPRの重要性は、以前と比べて低下しているという意見もある。米国のシェールオイル生産量が増加したことによってエネルギー安全保障が改善し、輸入石油への依存度が下がったため、SPRの意義は薄れつつあるというのだ。

2005年の時点では、米国は1日あたり1010万バレルの原油を輸入しており、うち480万バレル(約48%)がOPEC諸国産だった。当時の備蓄量は6億8500万バレルであり、1日あたりの輸入量を考えると、これは68日分の供給量に相当した。

2021年、米国の原油輸入量は1日あたり610万バレルに減少し、このうちOPEC諸国からの輸入はわずか80万バレルだった。さらに重要なポイントとして、輸入された原油の大部分は精製され、完成品として再輸出される。米国の原油および石油製品の純輸入量は、1日あたりマイナス6万2000バレル。すなわち、米国は石油の純輸出国なのだ。

したがって、SPRの戦略的重要性は以前に比べて低下しており、7億バレルの備蓄はもはや必要ないという主張には一理ある。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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