もう一つは、スタートアップ企業にプロダクトのコンセプトが受け入れられなかったことだ。
スタートアップには、どの業務もこなすことができる「スーパーマン」のような人材が多く、自己流の営業術を実践できるツールを求める営業担当者も多い。そうした背景から、最適な営業プロセスがシステマチックに再現される「Magic Moment Playbook」のコンセプトは「かえって使いづらい」と、受け入れてもらえなかったという。
苦戦を強いられるなか、転機は昨年の秋に訪れた。LINEやUSEN-NEXTホールディングスといった大手企業で顕著に定着しアカウントが拡大し始めたのだ。
「一つの企業内でより多くの営業担当者の方々がPlaybookを利用するようになったほか、『8人採用する予定だったチームが、 効率化に成功し、わずか2人の増員で当初の目標を達成した』など成果も生まれ始めました。『大手企業への価値提案にフォーカスするのが良いのではないか』と考えはじめました」
この方針転換が功を奏し、売り上げは既存顧客を中心に伸び、今年6月時点での年間収益額(AR)は3.3倍(2021年6月比)にまで成長したという。
村尾は、今回の調達について次のように話す。
「私たちのプロダクトは導入ハードルが高く、スケールしづらいように思われがちです。実際、今の売り上げは特定の数十社の大手企業に偏っている状態。加えて、ウクライナ情勢などの発生によって、難しい調達になるだろうと思っていました。
ですが、今回の営業方針の転換で示すことができた事業の成長余地を投資家に評価していただき、当初の想定を上回る調達を実施することができました」
今回調達した資金は「Magic Moment Playbook」のサービス強化や機能開発、及び事業拡大に向けた人材採用等に投資する予定だという。
「最終的には、営業担当者が商談中にお客様との関係作りのみに集中をしていれば、あとは全て弊社のシステムに任せていられる状態にしていきたいです。大手企業の営業組織の生産性を最大化するサポートをしていきたいと強く考えています」
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