だが、すべてのワクチン開発が新型コロナワクチンほどスムーズに進んでいるわけではない。参加者が十分集まらないために、スケジュールが遅れたり、完了できなかったりする臨床試験は多い。がんの臨床試験の場合、十分な参加者を集められなかったケースが25%にのぼるとの調査結果もある。米国立がん研究所が後援する臨床試験でも、4割近くが参加者不足のために打ち切りに追い込まれているという。
こうした状況を変えようと奮闘しているのが、臨床試験のプラットフォームを手がけるスタートアップ、パワー(Power)だ。同社は先週、ベンチャーキャピタル(VC)のフットワークとCRVが主導するシードラウンドで700万ドル(約9億8000万円)を調達したと発表した。
パワーのプラットフォームは、患者側が米国で現在参加できる臨床試験を検索し、試験チーム側と直接連絡をとれる仕組みを整えている。現在、およそ1万種類の疾患に対する効果を調べる臨床試験3万件あまりが掲載されており、同社によれば利用者は年内に50万人を超える見通しだという。
共同創業者のブランドン・リーによると、パワーはテクノロジーやデータサイエンスを活用して臨床試験データを集約・構造化したり、複雑な専門用語を平易な言葉に置き換えたりしている。「実施中のすべての臨床試験についてこれをリアルタイムで行っておりますので、患者の方々はようやく真実の情報源をもてるようになりました」(リー)
リーによれば、このプラットフォームは公表前の9カ月間に、患者を4000件あまりの臨床試験につなげる役割を果たした。これらの試験の実施企業には、製薬トップ20社のすべてが含まれるという。新たに調達した資金は、引き続き患者重視の製品の開発に充てるほか、ライフサイエンス企業とのパートナーシップ構築にも用いる予定だ。
リーは、さまざま患者向けに臨床試験が行われていることを患者たちに知ってもらいたいと力を込める。「臨床試験と聞くと、非常に重い病気の話と思う人がほとんどですが、実際は重篤なものに限らず、慢性痛や胃腸の不調など、あらゆる未解決の病状について臨床試験は行われているのです」
(forbes.com 原文)