当然のことだが、リーダーが懸念事項に気づくのが遅れるほど、問題を回避できる可能性は小さくなってしまう。それなのに、どうしてこうなってしまうのだろう?
残念ながら多くのリーダーは、「オープンドア・ポリシー」を自慢する、という間違いを犯している。つまり、チームメンバーに対して、手厳しい質問や問題点の指摘などをいつでも言ってくれ、と強調し、そう言っておきさえすれば、心からの率直な意見が貰えると思い込んでいるのだ。
実際には、発足まもない段階では、こうした上辺だけの言葉は聞き流されるだけだ。なぜなら、心理的安全性、すなわち、躊躇せずに懸念を伝えたり手厳しい質問を投げかけたりしても大丈夫だという感覚を醸成するには時間がかかるからだ。チームが成熟し、本物の結束や相互信頼が培われることが不可欠なのだ。
実際、多くのプロジェクト、イニシアチブ、チームが成功できるかどうかのかなりの部分は、リスクや潜在的な危険にどれだけ早く気付くことができ、リーダーやチームがこれらのリスクを緩和したり、難しい判断を下したり、場合によっては全面的に方針を転換したりできるかにかかっている。早期の問題発見につながる、こうした100%の率直さを、新生チームに確実に浸透させる魔法の薬はないとはいえ、かなり効果的なテクニックがひとつある。
リーダーは、プロジェクトのキックオフや、チームの顔合わせ会議を、ひとつの効果的な質問で締めくくるべきだ。それは、こういう質問だ。「我々が成功を目指すにあたって、一番気がかりなことは何だろうか?」
答えを引き出すにはコツがある。プロジェクトのキックオフや、顔合わせ会議が終わったら、解散する前に、リーダーのあなたが気づいていないリスクや、メンバーが気後れして言い出せないけれども全員で共有すべき重要な事項があることを事実として認める。
対面で集まっているなら、全員にメモ用紙とマーカーを配って、質問への答えを書いてもらい、退出時にドアの外に用意した箱に入れてもらう(バーチャルの場合は、会議の直後に、投票ツールや匿名のオンライン調査を使って意見を募るのがいいだろう)。