カリフォルニアで人気者の巨大ザトウクジラが船と衝突して死亡

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カリフォルニア州モントレー湾への毎年の訪問によって、当地で最も有名な哺乳類になっていたザトウクジラが船舶と衝突して死亡したことを、研究者らが確認し、個体数を回復しつつあるクジラたちを襲う脅威に新たな問題を提起した。

体長15メートルのザトウクジラは、カリフォルニア州ハーフムーンベイの海岸で8月28日に発見され、The Marine Mammal Center(海洋哺乳類センター)で解剖検査した結果、脊椎の骨の1つを骨折し、頭蓋骨を脱臼していたことがわかり、船舶と衝突したために死亡したことを示唆していた。

研究チームは数日後、打ち上げられたクジラが、地元の海洋生物学者やクジラ愛好家の間でよく知られている17歳のザトウクジラ「Fran(フラン)」であることを確認した。

巨大な海洋哺乳類を追跡できるサイト「Happywhale」では、カリフォルニア州のモントレー湾(暖かい季節にザトウクジラがエサを食べる場所)からメキシコの太平洋岸(繁殖しやすい場所)で2005年以降、250件以上の目撃例があり、フランは最も頻繁に目撃されている。

フランの性格もまた、彼女を地元の人気者にした理由だった。学者やホエールウォッチャーは、海面から劇的に飛び上がったり、船に向かって馴れ馴れしく泳いでくるところを何度も目撃している。San Jose Mercury News、NBCのSan Francisco系列局、およびSFGATEのインタビューによる。

フランは今シーズン、健康な雌の子クジラを初めてカリフォルニアに連れてきた。7月に母娘が揃ってモントレー湾を泳いでいるところが目撃されたことを海洋哺乳類センターHappywhaleが伝えた。

フランを含め、今年になってサンフランシスコ地域で少なくとも4頭のクジラが、船と衝突したために海岸に打ち上げられたと海洋哺乳類センターはいう。

ザトウクジラは、捕鯨の時代に大量に殺害されていた。当時捕鯨船は、鯨油の原料として体重40トンにもなるクジラを求めて海を探し回っていた。20世紀になって捕鯨産業が衰退し、政府主導の話し合いが行われるようになってから種の個体数は回復し、現在数千頭のザトウクジラがカリフォルニア州沖に生息し、冬場をメキシコや南米で過ごしていると研究者らは考えている

しかし、この巨大な動物たちは今も漁網に絡まったり、コンテナ船やタンカーに衝突するなどさまざまな人工的脅威に曝されているとモントレー湾国立海洋生物保護区の資源保護コーディネーターであるカレン・グリマーは語る。何頭のクジラが船によって死亡したか正確な数を推定することは難しいが、クジラがよく現れる場所を巨大船舶が頻繁に通過していることから「リスクは非常に高い」という。解決方法の1つは、シーズンのピーク時に船舶が10ノット(時速約18.5キロメートル)以下に減速することだとグリマーは考えている。多くの海運会社はカリフォルニア州沖、特に指定された航路で自主的に速度を落とすことに同意しているが、このシステムは一定の成果を収めているものの、特定の航路だけでなく「保護区全域で減速してくれることを望んでいる」とグリマーは付け加えた。

「船との衝突については大変心配しています」とグリマーはいう。「毎年何百隻もの巨大コンテナ船がモントレー湾保護区を通過しています」

ザトウクジラがカリフォルニア沖で摂食する時間は年々増えている。この傾向は部分的には個体数回復によるものだが、気候変動によって温暖な季節が延長されたことで、摂取できる食料が増えたことも関係している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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