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2022.09.11

「定住しない米国人」のための賃貸サービスLanding創業者の野望

(c)Landing


Landingの基本的なアイデアは、何年も前から彼の携帯電話の中にあったものだった。彼が数年前、購入したビルには、地元の大学の医学部生が、1年だけ滞在するために入居する場合が多かった。彼自身も、2016年にサンフランシスコに一時的に引っ越した際に、家具付きのフレキシブルな物件が少ないことに気がついていた。

Landingの立ち上げは、彼の個人的な事情からも困難に直面した。2019年6月に生まれたスミスの3人目の子供は生まれつき体が不自由で、複数の手術が必要だった。2020年3月には、パンデミックが発生してオフィスは閉鎖され、不動産市場は乱気流に突入した。

しかし、こうしたことが、彼を謙虚にさせているのかもしれない。「彼はとても控えめな人で、アダム・ニューマンのようなタイプとはまったく違う」と、LandingのCFOであるケイシー・ウーは話す。ウーはかつて、WeWorkに務めていた。

家具や配送も自前でコストを削減


Landingは、エクイティで調達した資金に加えて、2億3000万ドルの借り入れを行い、そこから8000万ドルを取り崩して、リース料や家具や配送などのあらゆる費用の支払いに充てている。同社はアルゴリズムを駆使して需要を把握し、リアルタイムで価格を設定している。7000室のアパートの入居率は90%前後というが、収益化にはまだ数年かかる見通しだ。

Landingは、事前に物件を借りておくのではなく、まず物件をリストアップし、借り手が決まれば数日以内に家具を用意して入居可能にするビジネスモデルをとっている。このモデルにすることで、借り手がつかない物件の家賃を払い続けるリスクを避けられる。また、WeWorkの長期リースの問題を教訓に、物件オーナーとの契約は1年契約とし、価格の再設定や採算がとれない物件からの撤退を迅速にしている。

LandingのCOOを務めるマーカス・ヒギンズは、かつてソフトバンクが支援するOyo Hotelsで働いた経験を持つ。「当社がこれほど成功したのは、オンデマンドで運営されているからだ」と彼は話した。

さらに、Landingのアパートの家具は、コストの安いベトナムの工場で生産され、アラバマ州ムーディにある28万平方メートルの倉庫に輸送されている。海上運賃が高騰する中で、同社は全ての家具をコンパクトに折り畳める構造にして輸送費用を抑えている。また、自社のトラックとドライバーを使い、すべてを標準化することで、設置コストを50%以上削減したと、CFOのウーは語った。

もちろん、今後の同社の命運を左右するのは、どれだけ多くの人が短期居住型の物件に住みたがるか、そして、同社の財務がうまくいくほど人気が持続するかどうかだ。

しかし、スミスは将来の見通しに強気だ。「誰もがこのようなライフスタイルを好むわけではないし、多数派になることもない。しかし、巨大な市場で小さな一角を占めるだけでも、大きなホームランになる」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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