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2022.09.11 08:30

「定住しない米国人」のための賃貸サービスLanding創業者の野望

(c)Landing

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36歳の連続起業家、ビル・スミスは、年間199ドルを払う会員向けに、すぐに入居できる家具つきのアパートを1カ月から借りられるサービスを提供する「Landing」を経営している。ホテルや社宅よりも安く、エアビーアンドビーよりも確実なLandingのサービスは、リモートで働くミレニアル世代や、一時的な居住のために家具を購入する手間をかけたくない人々を、主なターゲットとしている。

2022年の収益見通しが2億ドルの同社は、アメリカン・ランドマークやノースウッド・ラビンなどの不動産大手からリースした物件に、通常30%から40%の費用を上乗せして消費者に提供している。

スミスは、以前に設立したオンライン食料品配達サービスの「Shipt」を2018年にターゲットに5億5000万ドルで売却したが、Landingにはもっと大きなチャンスがあると考えている。彼の野心的な見立てによると、現在アパートに住む4000万人の米国人の10%が、10年以内に家具付きのフレキシブルな物件に住む可能性があるという。

「パンデミックは、私が5年かかると思っていたライフスタイルの変化を加速させた」と彼は言う。

直近では評価額4億7500万ドル(約666億円)で7500万ドルを調達したLandingは、累計2億3700万ドルをベンチャーキャピタルから調達している。フォーブスは、毎年約6倍のペースで売上を伸ばしている同社を、評価額10億ドルに達する可能性が最も高いと思われるベンチャー企業25社のリスト「ネクスト・ビリオン・ダラー・スタートアップ(次世代ユニコーン)」の2022年版に選出した。

WeWorkの盛衰が示したように、不動産分野のスタートアップには大きな可能性と同時に大きなリスクがある。スミスはこのリスクと運用の複雑さを、大量のデータで管理しようとしている。どの都市に需要があり、収益性が見込めるか。どうすればコストを削減できるか、価格設定やマーケティングは?

彼は自社が保有するデータを独自のアルゴリズムで分析している。「この分野は、人間主導ではなく、テクノロジーが主導するものでなければならない」とスミスは言う。

28歳でミリオネアに


アラバマ州バーミンガムの中流家庭で育ったスミスは、親から5歳の誕生日にノートパソコンを買ってもらい、両親が離婚した後は、週末になると父親の家でコンピュータに熱中した。

学校にはあまり興味がなく、16歳の時に退学し、10代の頃からネクステルの携帯電話の販売で月に5000ドル以上という、その年ごろにしては破格の収入を得ていた。2009年にVisaのプリペイドカードの事業を立ち上げたスミスは、5年後の28歳のときに、その事業を銀行持株会社のグリーンドットに数千万ドルで売却して、若きミリオネアとなり、バーミンガムのビルの7フロアを購入して家賃収入を得るようになった。

2014年にスミスはオンライン食料デリバリーのShiptを立ち上げた。同社は2016年までに、8つの州の25都市で利用できるようになり、一部の小規模な市場ではアマゾンやインスタカートの競合となった。2018年に同社をターゲットに5億5000万ドルで売却した彼は、さらに莫大な富を蓄えた。

しかし、スミスはその後も以前と同じ家に住み、それまでと変わらぬライフスタイルを維持していた。彼は、携帯電話の中に30数個の事業のアイデアをリストアップしており、ターゲットに事業を売却して、Shiptの業務から退いた後、次はどの事業に取り組もうかと考え始めた。
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編集=上田裕資

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