さらに言えば、事態が正常化するまでのあいだに、欧州連合(EU)や英国は経済の混乱に見舞われるおそれが強い。
第一に、石油輸出国機構(OPEC)は、原油価格を抑えるために増産する意欲がまったくないからだ。
トレーディング・エコノミクスのデータによれば、1年前に1バレル約72ドルだった北海ブレント先物相場は足元では100ドル超に上がっている。過去、原油価格が80ドル以上に高騰した際には、産油国は増産で対応していたが、今回はそうなっていない。近いうちに増産に転じそうにもない。
OPECなどの増産、期待薄
ユーラシア・グループは最近のリポートで、OPECは原油価格をできるだけ長く100ドル近辺で維持したい考えだと分析している。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が、OPECとロシアなどでつくる「OPECプラス」が原油価格の安定化のため減産に動く可能性を示唆したことが根拠だ。
加えて、化石燃料の未来は明るくないという判断などから、投資家が大手石油会社に石油・ガス関連の新規投資をやめさせたがっているという事情もある。
これはつまり、休止中の油井やガス井の生産再開は見込めないということだ。当然、エネルギー価格が穏当な水準に下がるほど供給は増えないということになる。
「長期戦」の様相強めるエネ危機、企業収益も圧迫
ロシア産の原油や天然ガスへの依存やロシア政府に対する制裁の反動があだとなり、欧州経済は押しつぶされつつある。欧州経済の成長率は米国よりもはるかに低く、リセッション(景気後退)にも陥りやすい状態にある。
リードラグ・レポートは「欧州のエネルギー危機は何年も続く戦いになる様相を強めている。OPECはリスク抑制のために生産枠を引き上げることに関心をもっていないようだ」と最近の顧客向けリポートに記し、近いうちに事態が解決に向かう可能性は低そうだとの見解を示している。
以上を踏まえれば、おそらくEUでは企業の収益も悪化することになりそうだ。投資家は警戒しておいたほうがよいだろう。
(forbes.com 原文)