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2022.09.06

抗生物質不使用牛肉に偽装疑惑が浮上、ホールフーズに集団訴訟

Editorial credit: Iv-olga / Shutterstock.com

南カリフォルニアにある複数のホールフーズ店舗で「抗生物質不使用」として販売されていた食肉に関して疑惑が浮上し、消費者を原告とする集団訴訟の申し立てが2022年8月23日に行われた。非営利団体のファーム・フォワード(Farm Forward)がホールフーズの牛肉を検査したところ、抗生物質や抗寄生虫薬を検出したという。

訴状は、抗生物質不使用をうたう食肉業界で密かに抗生物質が使用されている現状を是正し、薬剤耐性細菌の蔓延に歯止めをかけることを目的としている。工業的畜産業界における抗生物質の過剰使用は、薬剤耐性細菌蔓延の原因となっていると指摘されている。

今回の集団訴訟を消費者を代表して行ったファーム・フォワードのエグゼクティブディレクター、アンドリュー・デコリオリス(Andrew DeCoriolis)は、「抗生物質不使用といううたい文句は検証されていない。こうした主張は、多かれ少なかれ『信じてください』という意味を含んでいる」と語る。

「我々は食肉業界に、『見せかけだけの動物福祉』をやめさせたい。彼らは、一般大衆が求める食用動物の飼育基準を満たすべきだ。その基準には、日常的な抗生物質投与をおこなわないことも含まれる。抗生物質投与は、不衛生で危険な環境での飼育という悪習をごまかすためにおこなわれている」

本記事執筆時にホールフーズにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

抗生物質の過剰使用は、薬剤耐性の進化を加速させ、人類の健康を脅かす。薬剤耐性細菌に関連する疾病で亡くなる人は、2050年までに年間1000万人に達すると予測されており、地球温暖化はこの問題をさらに悪化させるとみられている。

抗生物質不使用の食肉を販売することには、金銭的インセンティブもある。牧畜農家から小売店まで、サプライチェーンのすべての関係者がプレミアム料金を課すことができるからだ。店舗ではしばしば、従来の食肉に比べて、1ポンド(約450g)あたり1ドル高い価格で販売されている。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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