ビジネス

2022.09.23 11:00

カスタマーサクセスを加速させるコミュニティイベント「Pulse」とは

ゲインサイトのコミュニティイベント「Pulse」

B2B事業において顧客との継続的な関係構築の鍵を握るカスタマーサクセスの考え方は、近年、日本でもその勢いを増し、浸透し始めている。米国カスタマーサクセス業界の大手ゲインサイトは5月、日本法人設立の発表をした。

8月、新型コロナウイルスのパンデミックを経て、3年ぶりに同社主催のカンファレンス「Pulse」がサンフランシスコで開催。2013年から続くPulseは、カスタマーサクセスに携わるプレイヤーが集結するダイナミックなコミュニティイベントだ。

2日間にわたり、約2500人がリアル会場にて参加したPulse現地視察を元に、カスタマーサクセスの現在地を探る。

1.「新しい流行語」にしてはいけない


カスタマーサクセス、つまり顧客を成功に導くという考え方が浸透するなか、米国ではカスタマーサクセス部門やチーフ・カスタマー・オフィサー(CCO)の存在感も増している。

リンクトインの2020年の調査報告書では、米国で需要が伸びている職種の6位に、カスタマーサクセス・スペシャリストがランク入り。9月現在、リンクトイン上で世界中の求人情報から“customer success”と検索すると約8万5000件がヒット。肩書に「カスタマーサクセス」が含まれる求人情報は約1万件存在する。

SaaSやサブスクリプションといった新しいビジネスモデルの普及により、顧客との取引関係は「一回売ったら終わり」「問題が起きたら対応する」というものから、「使い続けてもらう」という長期的な連携へと変化した。これは、様々なビジネスに影響するパラダイムシフトだ。

この意味において、カスタマーサクセスを「海外からやってきたトレンドのひとつ」と理解するのは間違っている。確かに、カスタマーサクセスは、ソフトウェアの事業モデルの進化に伴って新たに確立された役割であり、AIなどの新しい技術を活用したソリューション提案といった革新的要素を含むものではある。

一方、既存顧客とともに成長するというカスタマーサクセスの本質的な考え方は、とくに未来予測が難しい時代において、経営者が企業の持続的な成長を目指すために不可欠な視点だといえる。

2. カスタマーサクセスの主役は「人」


ゲインサイトは、カスタマーサクセス領域におけるソフトウエアを提供するテック企業だが、同社は“ヒューマン・ファースト”を最も重要な概念の一つに据えている。これは、人を大事にすることで持続的なビジネス成長を導くということだ。

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ゲインサイトのニック・メータCEO

今回のPulseでも、この概念が至る所にちりばめられていた。初日の基調講演で、ゲインサイトのニック・メータCEOは「Pulseのコミュニティは連帯感がすべて」と強調し、多くのカスタマーサクセス担当者にとって、同じ課題やミッションを持った人との出会いこそがPulseでの最も大きな収穫となっていると語った。

コミュニティの反対は孤独だ。過去のPulseや自身のブログで、メータは一人ぼっちでランチをしていた少年時代のエピソードを紹介している。惨めな孤独という原体験を持つ彼だからこそ、ビジネスにおいても血の通った人間関係やコミュニティを重視している。
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取材・文=Maki Nakata

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