ビジネス

2022.09.23 11:00

カスタマーサクセスを加速させるコミュニティイベント「Pulse」とは


4. カスタマーサクセスは多様な経営者を育てる


カスタマーサクセスは、経営者や幹部を目指す人にとっての新しいキャリアパスでもある。関連職種の裾野が広がるにつれ、CCOからCEOに昇格する例も増えつつある。Pulseでは、キャリアアップという視点でのベストプラクティスも共有された。

例えば、ドロップボックスのCCOを経て2020年にハブスポットのCCOに転職したヤミニ・ランガンは、昨年9月に同社CEOに就任。Pulseのパネルディスカッションに登壇した彼女は、カスタマーサクセスにおけるキャリアについて、2つの助言をした。1つは顧客を熟知し、顧客の課題を解決すること。もう1つは、ある一定の専門性だけでなく、会社全体を俯瞰する力を身につけることだ。

また、領域自体が新しいからこそ、キャリアアップを一度諦めた人を含め、さまざまなキャリアの背景を持つ人が参画しやすいという点も特筆に値する。たとえばDruva(データ保護・管理に特化したSaaS企業)のカスタマーサクセス・ディレクター、ターニャ・ストラウスは出産や育児による6年間のキャリア・ブレークを経て、未経験からカスタマーサクセスの世界でキャリアアップを成功させた。

5. カスタマーサクセスの鍵はコミュニティ


顧客同士をつなぐコミュニティは、カスタマーサクセスに不可欠だ。「この業界にいるとソフトウエアに囚われ過ぎてしまって、人間味というのを忘れてしまいがち」と、ゲインサイトのカポーティCCOはいう。Pulseに象徴されるコミュニティはそれを補完するものでもある。

例えば、戦略的なIT投資を支援するSaaS企業、Apptioのトーヤン・エスプートCCOは、ゲインサイトの顧客という立場において、その充実したコミュニティの価値を評価する。

Apptioのトーヤン・エスプートCCO
Apptioのトーヤン・エスプートCCO

ベストプラクティスに興味があれば、Pulseなどで知り合ったゲインサイトの他の顧客に直接連絡して、アイデアや戦略を共有することができる状況にある。このネットワークにアクセスできることは、カスタマーサクセスのプロフェッショナルが直面している課題や機会についてゲインサイトがもたらす業界の視点とともに、非常に貴重なものである。

コミュニティの活用、そして顧客主導のセルフサービス型ソリューションの推進は、顧客数増加やマルチプロダクト化といった事業拡大に伴って経営者が直面する、いかにカスタマーサクセスの質を維持し続けるかという課題の解決にもつながる。

「より少ない人数でより多くのことを行う必要がある。だからこそ、 “コミュニティ主導の成長”が改めて重要視されている」とゲインサイトのCCO カポーティは見解を述べる。

Pulseのようなコミュニティイベントは、ゲインサイトやApptio、あるいはその他さまざまな新しい市場領域の開拓者(カテゴリー・クリエイター)にとっては、仲間を増やし、業界自体を確立、成長させる手段でもある。ゲインサイトが切り開くカスタマーサクセスの浸透と定着のために、Pulseはなくてはならない要素なのだ。



ゲインサイトのメータCEOは、「Pulseというコミュニティに、カスタマーサクセスやプロダクトだけではない、より多くの部門を巻き込み、さらに、Pulseをさまざまな国や地域に展開していきたい」というこの先のビジョンを語った。

取材・文=Maki Nakata

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