リーダーの仕事は、この意思ある個人を見つけ出し、サポートし、意思をブラッシュアップさせる体制を作り、意思に基づいた決定を成功に導くのを支援することである。そして組織はこういった意思決定のあり方や会議体のあり方を実現しやすいプロジェクトの作り方、組織の作り方、権限のあり方を設計していく必要がある。
ネットフリックスの創業者リード・ヘイスティングスは、INSEAD教授のエリン・メイヤーとの共著「NO RULES」の中で、「情報の通じたキャプテン」による意思決定を紹介している。
あらゆる重要な意思決定には、情報に通じたキャプテンが任命され、その人がすべての意思決定の自由と結果への責任を持つことになっている。まさに「意志ある決定」を行うためのプロジェクトのあり方を定義している例である。
強い意志がある意思決定かどうかは結果に大きく影響する。どんな意思決定であっても結果を出すまでには壁もあるし、紆余曲折もある。想定外のことが起こった時に「やっぱり間違っていた」ではなく、「どうやったらこの壁を乗り越えられるか」と考える力は「強い意志」からしかでてこない。
反対意見や異なる意見は、キャプテンの意見を変えるためだけのものではない。想定される壁に対する準備にもなる。それが成功確率をあげてくれるのである。
ネットフリックスの創業者リード・ヘイスティングス(Getty Images)
リーダーは、その意思決定が、
・誰かの思いつきでなく、その強い意志に基づいているか?
・賛成案や反対案、異なる意見を集めているか?
・「妥協の産物」もしくは、「薄っぺらい意志がある決定」になっていないか?
を常に自問自答していく必要がある。
組織は、リーダーが「意志ある決定」を下せる、もしくは「意志ある決定」を支援できる存在になれるよう支援していく必要がある。その時はじめて「個の才能」が最大限発揮されるのである。
私も常にこの自問自答をするが、そう簡単ではない。議論のプロセスの中で大した意思ではなかったことに気が付くこともあるし、見えていなかった観点がたくさん出てくることもある。それでも貫きたい意思をいかに醸成するかが大事であるし、そのために考え続けるしかない。行きつくのは最も考えた者が、最も強い意志を持っているという事実である。