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2022.09.01 17:00

加熱する米労働市場に「転換点」の兆し 民間雇用、2カ月連続で伸び鈍化

Getty Images

給与計算サービスのADPが8月31日に発表した8月の全米雇用リポートによると、民間部門(農業を除く)の雇用者数の伸びは2カ月連続で鈍化した。企業が連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの影響を見極めようとするなか、加熱していた労働市場が転換点に差し掛かっている可能性が指摘されている。

8月の民間部門の雇用者数は前月比13万2000人増にとどまり、市場予測の約30万人増を大きく下回った。金融や専門・ビジネスサービス分野で雇用者数が減ったことが響いた。

ADPのチーフエコノミストを務めるネラ・リチャードソンは、予測を下回った今回のデータからは「企業の雇用がより慎重なペースに変わってきたことがうかがえる」と解説。伸びの鈍化は「米経済から発せられる矛盾したシグナルを各社が読み解こうとしている結果ではないか」との見方を示す。

そのうえで、「加熱状態の雇用拡大が正常化に向かう変曲点にあるのかもしれない」と述べている。

企業規模別にみると、8月にもっとも数字が悪かったのは従業員数20人未満の零細企業で、雇用者は4万7000人減った。中規模の企業や大規模な企業はいずれも5万人超の増加となっている。

一方、ADPが米国内の就業者2500万人超の給与データから算出している年間給与は、8月に前年同月比7.6%増と、今年春以降の水準が続いた。伸び率は昨年初め時点の約2%から大幅に加速している。

米国で数十年ぶりの高インフレを沈静化するために、FRBは積極的な利上げを断行している。ただ、その結果、経済成長を損なうことにもなるため、FRBのメンバーは労働市場が積極的な利上げの継続を正当化できるほど堅調なのか、見定めようとしている。

バイタル・ナレッジ・メディアのアナリスト、アダム・クリサフリはADPの8月のデータについて、今後の利上げを緩和させるほど労働市場が冷え込んでいくことを示唆しているとし、株式市場にとってはポジティブな内容だろうとコメントした。

2日には労働省が8月の雇用統計を発表する。市場では、非農業部門の就業者数は前月比32万8000人増と、前月の52万8000人増から伸びが鈍化するとみられている。

forbes.com 原文)

編集=江戸伸禎

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