(C) Amazon Studios
「最後の結末は私自身も予想を楽しんでいる」
このように原作をリスペクトしつつも、新たな創作が加えられている本作だが、原作を尊重する昔からのファンが、残念な思いをしないようにも配慮されている。
映画三部作ではトールキンの遺族が、原作の描いた世界観を必ずしも尊重していないと批判したことが伝えられている。しかし本作はトールキン財団の元に作られた創作で、原作への忠実度という単純な尺度ではなく、その世界観の再現という意味でファンも納得の作品に仕上げているからだ。
J.D.ペインは「2017年にAmazonが指輪物語の権利を獲得したあと、我々は彼の作り上げた神話の世界をどのように映像にするかを練り上げてきました」と話す。
ペイン氏によると、トールキンは友人への手紙や資料などで指輪物語から派生するスピンオフの創作や、原作世界へと繋がる別の新しいシリーズが、他の創作者によって描かれることを望んでいたことがわかっているという。
「彼は自分がいなくなった後に、創作が続くようレジェンダリウム(トールキンが長年作り上げてきた巨大な神話群、伝説体系、世界観のこと)について深く描写し、その世界の描写にさらに深みを与えていく他の表現者が登場することを望んでいたのです。私たちは彼の(著作を管理する団体の)意思を受け継いで、その世界観の中から新しい伝説を追加しました」とJ.D.ペインが語る。
このようなことができるのは、トールキンが物語の中に新たな創作をするための”パン屑”を残しているからだ。
J.D.ペインは続けて「例えばハーフットについて彼は“容赦のない種族”だと書いています。他のホビット族に比べ、髭もなく少し肌が黒い。そして他のホビットより少しエゴイスティックです。なぜなら流浪の民として、中つ国を彷徨う種族だから。2000年後に定住の里を持っているホビットとは異なる文化を育んでると想像できますよね。そうした情景、あるいは文化的背景を想起させる描写を丁寧に拾い上げながら、どのようなキャラクターが生まれるだろうか? そのキャラクターはどのように行動するだろう? と考えたのです」
さて、このように新しい世界観を追加して生まれ変わる第二紀の指輪物語。全5シーズンとなる予定のこのドラマの結末に関して、J.D.ペイン氏は「自分自身でも結末を予想しながら仕事に取り組んでいる」と話す。
もちろん原作では完結している話だが「ある出来事、物語が別のストーリーに影響することもあります。大まかな方向は予想していますが、ドラマの進み方次第で結末へと至る道、心理的な描写などは大きく変化するでしょう。この作品は私たちの魂の最も深いところある“想い”が込められた作品です。その想いが皆さんの心に響き、楽しんでいただけることを願っています」と教えてくれた。
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