とはいえ、AmazonがPrime Videoで2022年9月2日から配信開始する連続ドラマ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」は、どうやら前例がない巨額投資に見合う作品に仕上がっているようだ。
これは過去の映画、ドラマ共に比べる対象がないほどの超弩級大作だ。美麗な最新コンピュータグラフィクスが生み出す仮想世界の中に、身長が1メートルほどの種族から2.4メートルに達する種族が自然、あるいは文明と共に生きる様子を克明に描き出す。壮大なスケールの王国や、神の降臨や戦いを想起させる神々しい光、あるいは闇を描く芸術的なシーンが連続する。
一方で映画ファンならば、その冒頭から最新のシネマカメラと美しいレンズによる描写を活かした撮影にウットリするかもしれない。コンピュータによる映像だけに頼らず、レンズを通した光を丁寧に取り扱い、撮影方法を工夫することで幻想的な世界に現実感を与えている。
さらにドラマ全体に“深み”を与えているのが、ストーリーで描かれている世界観の緻密さや深く示唆的なメッセージだ。娯楽作として予備知識なしに楽しめる、純粋な映像エンターテイメントであると共に、原作が本質的に内包している社会的なメッセージ性も込められており、名作の予感がヒシヒシと伝わってくる。
遠い島国に建国されたヌーメノールは初の映像化 (C) Amazon Studios
「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」は、ロサンゼルスを皮切りにメキシコシティ、ムンバイとプレミアイベントが開催され、締め括りのロンドンに向けニューヨークのプレミアを終えたばかり。筆者はこのうち、アジア太平洋地区向けに開催されたムンバイでのプレミアに参加してきている。
作品の総指揮は二人の人物が関わっているが、そのうちの一人であるJ.D.ペイン、およびドラマを彩る多様な種族を演じたキャストたちのインタビューを交えながら、この作品が描こうとしているテーマ、そしてプレミア上映された冒頭の2話から垣間見える世界観などをお伝えしたい。