インフレ対策は消費者支援のためではない 米FRB政策の真の目的とは

米FRBのジェローム・パウエル議長(Getty Images)


FRBは、なぜここまで積極的にインフレ抑制に取り組んでいるのか? 消費者に悪影響があるからという理由は、ただの見せかけだ。インフレは最終的に賃金上昇につながる。政府は移転支出を増やすことができ、多くの給付金は自動的にインフレに合わせて調整される。FRBがインフレ抑制を目指す主な理由はそうではなく、高インフレがもたらすボラティリティー(不安定さ)にある。

パウエルは最近、「物価の安定を取り戻すことは私たちの義務だ。物価の安定は時間をかけて強固な労働市場を作るものであるため、失敗はできない」と断言。物価の安定を回復できなければ、堅調な労働市場を中長期的に継続させることはできないと述べた。

FRBのミシェル・ボウマン理事も同調し、インフレにより「1970年代に経験したような高いインフレを伴う長期的な経済の弱体化」がもたらされる恐れがあると指摘。セントルイス連銀のジェームス・ブラード総裁は1970年代について「実体経済も不安定だった」と述べている。

これが、この問題の最重要点だ。高インフレの経済は景気循環が非常に激しく、好景気と景気後退が繰り返される傾向にある。一方で低インフレの経済ははるかに安定しており、着実な成長が見込める。2010年代のインフレ率は平均2%で、9%だった1970年代と比べて経済は大きく安定していた。このパターンは、米国と海外の両方の経済史に見られる。

FRBが進める政策の理由は次のようなものだ。第1に、高インフレは雇用、生産、収入の実体経済に悪影響をもたらす。第2に、インフレ期待の上昇を許すと、インフレ抑制コストが増える。第3に、こうしたインフレ期待を低く保つため、実際のインフレはおおむね低水準を維持しなければならない。

筆者は過去の記事で、FRBがこうした措置に出るかどうかに懐疑的な見方を示した。雇用が打撃を受け始める1年後にFRBがどう反応するかについては、まだ疑問がある。これまでのFRBの行動や発表を見ると、現方針を固持する可能性が高いだろう。FRBは、米国人の長期的な繁栄のためには低インフレが必要なことを理解しているのだ。

forbes.com 原文)

編集=遠藤宗生

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