看護師の減少は、患者にとって大きな問題だ。十分な数の看護師がいなければ、病院は文字どおり機能不全に陥る。処置の遅れや、患者の受け入れ拒否が増えることになるだろう。
看護学校の学生数を増やせばいいと思う人もいるかもしれない。だが、看護師の育成には費用も時間もかかる。入院患者を担当できるようになるまでには少なくとも5年、手術室看護師になるまでには、さらに長い時間がかかる。
インフレと看護師不足という二重の脅威のなかで、医療機関は“ルーズルーズ”(何を選んでもうまくいかない)の状況に追い込まれたと感じている。看護師を採用・確保するために積極的に賃金を引き上げれば、コストは天井知らずに増加する。そのコストを抑制するために給料を抑えれば、より多くの看護師が辞めることになるだろう。
即効性のある解決策がなければ、医療保険に加入していても、手術を先延ばしにされる患者が増えることになる。その結果として考えられるのは、予後不良や避けられたはずの合併症、死亡の増加だ。
3: 医師の「燃え尽き」危機
「燃え尽き」を報告する医師の割合は、パンデミック発生前から44%を超えていた。仕事上の負担がますます大きくなり、患者が相次ぎ命を落とす現在のような状況下で、医療従事者が抱える心的外傷(トラウマ)の問題は、すでに“沸点”に達している。看護師やサポートスタッフの不足、保険会社や病院側が目指すコストの削減も、医療従事者の不満に拍車をかけるばかりだ。
こうしたなか、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」という言葉を拒否する医師が増加している。彼らが直面している問題は、優れた医療を提供することができないことによる「モラル・インジャリー(精神的損傷)」だという。
ハリケーン・カトリーナがそうであったように、複数の危険な力が一度にまとまって襲来すれば、医療現場には甚大な被害がもたらされる。ここに挙げた3つの“巨大な力”に同時に対応するために必要なのは、これまでとは「根本的に異なる」アプローチだ。
(forbes.com 原文)