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2022.09.03

「静かな退職」やリモートワークの増加で米国の小売業で人手不足

Getty Images

小売業は他の多くの産業に比べて、すでに高い離職率に悩まされている。人手不足と既存従業員からの要求の増大で、雇用が厳しくなる感謝祭から年始にかけてのホリデーシーズンに向けて小売業界はストレスを感じている。求職者の多くはリモートワーク、高い給与、多くの福利厚生を求めるため、求人応募は依然として多いものの、実店舗での小売業の求人は厳しい。「静かな退職」の台頭は既存従業員のエンゲージメント度合いに影響を与えそうだ。

新しい仕事を求める米国成人


米求人サイト「キャリアビルダー」の2022年調査データによると、米国の被雇用者の10人に7人が現在職探しをしており、62%がまったく新しい業界・分野への転職に興味を示している。仕事を抱えながら職探しをしている人の多くは、軽い気持ちで仕事を探したり、募集中の職種について採用担当者と話をするよう誘われたりして受動的に求職活動をしている。

全米小売業協会(NRF)は、今年の小売売上高が前年比で6~8%成長すると予測しており、データによると今年上半期の小売売上高は前年比7%増だった。ホリデー商戦は多くの小売業者にとって重要な時期であり、売上計画を達成するために9月には雇用計画を立てる。しかし、労働者の仕事に対する姿勢は変化しており、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来、雇用主に対するコミットメントが薄れているため、小売業者が店舗で労働者を雇用し、維持するのは困難な状況となっている。

店舗従業員にリモートワークという選択肢はない


小売業界の労働者にとってさらなるジレンマとなっているのは、パンデミック以降、多くの従業員がリモートワークを希望していることだ。リモートワークは小売販売の85%が取引される実店舗の小売環境には適さない。キャリアビルダーの最高マーケティング責任者のクリスティン・ケリーは「新型コロナとパンデミックはまったく新しい働き方をもたらし、それは今後も変わることはない。人々は通勤時間の短縮と在宅勤務に価値を見出している」とインタビューで話した。多くの企業はリモートワーク導入で世界中の優秀な応募者を採用できるようになるが、これは実店舗での労働環境では機能しない。

小売業の雇用は7月に2万2000人増加し、今年の第4四半期(10〜12月)も大幅に増加すると予想されている。ほとんどの小売業者はホリデー商戦時期の雇用計画をまとめ、早ければ9月にはそのプロセスを開始する。小売業界は昨年、ホリデーシーズンに向けて50万〜66万5000人を雇用する計画だった。今年の小売業の売上高は前年比6~8%増と予測されており、ホリデーシーズンの求人数は増加する見込みだ。ケリーは「あらゆる業界の雇用主が人材を確保しようとするため、ホリデーシーズンを前に非常に活発な雇用情勢が予想される。小売店ではレジ係、荷物の仕分けや発送を行う倉庫労働者、次々と入るオンライン注文の配送を行う輸送労働者など、さまざまな労働者が必要になる」と指摘した。
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翻訳=溝口慈子

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