渡仏して戦略的にミシュラン獲得 シェフがいま考える「料理」の意味

南仏ニースに構えるレストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」


松嶋:ありがとうございます。ミシュランの一つ星も、実際に星を獲得した店に在籍した経験もあり、将来星を獲得すると思われる同僚とも働いたこともあり、どうすれば獲得できるのか話を聞いていました。

そして、「自分でもできる」と思えたので、ミシュランの星を獲得するための方法を実践したと言えます。

中道:やはり、実際に経験した人から話を聞くことは重要と言えそうです。

松嶋:そうですね。フランス人はセルフプロモーションのような自分たちを売り込む力を持っていて、修行中から勉強になりました。自治体や生産者とタッグを組めるかどうか、プロモーターを押さえているかどうかが重要で、それらを働いていたお店のシェフたちから学ぶことができたのは、貴重な経験でした。

中道:フランスのシェフは、料理だけをしているわけではないと言えますね。

松嶋:最近は「料理」という言葉が非常に難しいと思っています。キッチンに立っているだけでは「調理」でしかありません。僕は、食材を探しに行くことも料理の一部で、得た食材にに手を加えたら料理だと思っています。

ほかにも、天候不順から季節の食べ物を出せないと気づくことも、お客さんが地元住民かどうかで求めているものが違うと気づくことも料理になります。最近は、食べ手の健康を考えることも料理だと考えていますね。

キッチンだけの仕事は調理でしかありませんが、日本人はその調理が大好きだなとも思います。



中道:腑に落ちる話です。

松嶋:全ての職業に通じることですが、職人気質の強さは現場に立つうえで大事なことです。しかし、日本では“使い手”のことを考えないで発明されるものが非常に多い気がします。外に出て人と対話することに慣れていないのか、内にこもりがちな印象もあります。

中道:僕は、「どういう価値を作るかで、人はお金を出してくれる」という意識を持っています。その価値は、相手に伝わって初めて価値になるため、自分たちが勝手に価値だと思い込んでいても、実際は価値があるとは言えません。だからこそ、コミュニケーションが重要だと、リーバイスの仕事をしていた頃に言われていました。

いくら「このプロダクトはこうだからいい」という話を散々したところで、それはコミュニケーションではなく、“作り手”の考えでしかないと。

松嶋:まさに、そうですね。

中道:松嶋さんは、ニースにレストランを構えられているんですよね。すると、その場所柄、地元住民だけでなく、観光客も多く訪れるのでしょうか。

松嶋:そうですね。8月はフランス語を使わないほど、世界中の言語が飛び交っています。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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