ビジネス

2022.09.01 08:30

売れ続けて20年超、海外にも広がるほぼ日「TECHO」の世界


海外のユーザーからも、手書きの楽しさとか、文房具を揃えて好きな紙に書く喜び、手帳が厚くなっていく様子など、日本のユーザーと同じポイントで好反応がある。ユーザーが根源的に求めるものは世界でも共通しているのだ。デジタル時代においても「書く楽しみ」と言うのは、「便利なもの」とは別のものとして求められているのだろう。


(左から)記者会見に登壇したほぼ日 社長の糸井重里と、ほぼ日手帳担当の星野慎子

社長である糸井も、「海外のお客さんに教えられて、我々が後追いしている気がしている」と語る。

「いま中国からインターンできている2人も、ほぼ日手帳で僕らのことを知ったというのだから、すごいですよね」

糸井いわく、いま世界の文房具売り場では、文房具は2〜3種類ずつ程度しか売っていない。レストランも同じで、多種多様なメニューを提供する店が軒を連ねているのは日本特有の文化なのだ。

「いろいろある中から選ぶ楽しみを、文房具の世界は失ってしまったんです。お客さまは3種類くらいの中から商品を選ぶことになる。そんな中、ほぼ日手帳は選ぶ“楽しさ”を提案ができたのだと思う。日本でもそうですが、海外の人もやっぱりこの手帳に楽しみを見つけてくれています。ほぼ日に関するコミュニティもつくってくれているんです」

海外でここまで市場が広がる大きな原動力となったのも、各地で自発的につくられたコミュニティだった。InstagramなどSNSでファン同士がつながって、手帳に記入した絵をみせ合ったり、日本語コンテンツの意味を教え合ったりしている。

手帳を彩るオリジナルのキャラクターまで生み出したトロント大学の学生もいて、そのスタンプやデコテープなどのグッズをほかのユーザーが真似をして使う、といった動きもある。
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文=北本祐子

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