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2022.09.01 07:00

PTSD患者が大麻による治療で恩恵を受ける可能性が明らかに

安井克至

興味深いことに、これまでの研究でPTSDの患者は、認知的再評価の課題中に非常に異なる脳活性化パターンを示すことが明らかになっている。THCがこうした差異を軽減するのに役立つとすれば、大麻からPTSD患者が恩恵を受ける理由がまた1つ明らかになるかもしれない。

その結果、研究者らは、THC群だけが再評価中にネガティブな感情をうまく抑制することができ、プラシーボ群ではそれができなかったことを発見した。さらに、THCを使用した時にのみ脳のいくつかの領域の活性化が高まることもわかった。これらの領域には、角回や大後部帯状皮質が含まれており、これらの領域の活動は通常、PTSDの患者で異常に低下しているという。実際、この実験では、THCはPTSDの患者とそうでない患者の脳の活性化の差をなくすことができた。

PTSD患者が引き金となるイメージや記憶をうまく捉え直すのを助けることで、THCは治療中のネガティブな感情を抑えるだけでなく、長期的には治療をより成功に近づけるかもしれない。研究者達が説明するように「先行研究は、再評価に失敗したネガティブイメージと比べて、以前再評価に成功したネガティブイメージに、再接触した際に、感情の喚起が減少することを実証しています。言い換えれば、再評価が成功すれば、今後その引き金になるものに遭遇するたびに、感情反応に持続的な影響を与えることができるのです」

著者達は「PTSDの治療において、THCが認知的再評価療法に有益な薬理学的補助となることが証明されるかもしれません」と結論付けている。成功した再評価を促進することで、THCは、PTSDの患者に持続的な利益をもたらすのに役立つかもしれない。

それでも研究者達は、この研究には限界があることを注意深く指摘している。例えば、投与されたTHCの効果のピーク時に、参加者が本当にテストを受けていたのかどうかを確認するための血液検査が欠けていることなどだ。また、今回の研究では、感情調整タスクにトラウマに特化したイメージは含まれていないことも指摘されている。通常、恐怖を引き起こすイメージは、PTSDの患者に、より感情的な反応を引き起こすが、トラウマに特有のイメージは、異なる結果をもたらすかもしれない。さらに、この研究は二重盲検プラシーボデザインを利用しているが、サンプルサイズは比較的小さかった。今後、より多くの患者を対象とした研究が行われれば、より信頼性の高いデータが得られるだろう。

この結果を確認するためには、さらなる研究が必要であることは間違いないが、今回の研究が大麻がPTSDに苦しむ人々にとって有益であることを示唆する証拠のひとつを提供するものであると言える。

翻訳=上西 雄太

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