ANAの「地上でも働くCA」 機内で鍛えた逆算仕事術で活躍

ANAグループ会社「ANA X」での勤務の傍らCA業務を兼務する吉村祐子氏(右)、航空機のサービス品質向上関連業務を経てCA職に完全復帰した白鳥裕子氏(写真=帆足宗洋)


その中で私は、「機内でのCA業務を知っているからこそ提言できる」ことがたくさんあることに気づいたのです。つまり、同じ部署の同僚たちに比べてよりCAに近い立場であることが、SAの強みであると。お客様と接する機会が最も多いポジションであるCAと、サービス開発や運用手順を定めたり、制度設計をして行く担当との間で、両方の業務を兼務する私たちSAが架け橋になることが役割の一つと感じました。

CAとしての経験を、他のCAのため、ひいてはお客様のために役立てながらANAブランド構築の一翼を担える。それこそがSAの醍醐味です。

生きたのは「逆算からの時間管理」「マルチタスク」の習慣


──出向先で活きたCAならではのスキルとは。

白鳥:なんといっても「逆算して時間管理すること」ですね。

機内でのタイムマネジメントは特に重要で、CAは常に時間を意識して日々の業務を行なっています。安全管理を徹底したうえで、定時運航を厳守しながらお客様に満足していただける質の高いサービスを提供する。そのためには少しの時間のロスも許されません。

たとえば、同時に多くのお客様からのリクエストに対応したり、着陸体制に入る時間から逆算してお客様にトイレをご案内したり。細かいことを挙げるとキリがありません。

限られた時間の中で速やかに調整することがフライト業務の基本です。全体を把握する意識をもちながら目の前の課題に取り組む姿勢が大切なのは、どの企業や事業体にも共通することかと思いますが、ゴール設定をし、そこまでの道筋を検討する思考が身についていたことで、不慣れな業務であっても迷うことなく取り組むことができました。

吉村:「マルチタスク」も活きていると思います。

機内ではあちらこちらのお客様からご要望をいただきます。すべての要望にぬかりなく応える段取りを考える習慣は、出向先での業務で活かすことができました。一つのことだけに集中せずに周りを見ながら臨機応変に対応する。フライト業務から離れたことであらためて、そのスキルが身についていたことに気づくこともできました。

null

ほかには、「常にお客様視点で業務を行なう視点」にも助けられましたね。

500人乗りの大きな機材に1日に3便乗務したとして、単純計算で1500人ものお客様にお会いすることができます。十人十色のお客様にどうやって高品質な保安とサービスを提供できるかが、CAの仕事の醍醐味です。

ANAをご利用になるお客様に向けてSNSで発信する記事を作る際も、サービスを受ける側の「お客様視点」で物事を捉えられることが助けになっています。こういう訴求があればうれしいかなとか、ひびきやすい文言選びなど。お客様と直接関わり、その経験を通して習得してきたCAとしてのスキルを発揮できる部署は、機内以外にもたくさんあることがわかりました。
次ページ > 「客室」の外の世界を見たからこその相乗効果

文=堤直子 編集=石井節子 写真=帆足宗洋

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事