ANAの「地上でも働くCA」 機内で鍛えた逆算仕事術で活躍

ANAグループ会社「ANA X」での勤務の傍らCA業務を兼務する吉村祐子氏(右)、航空機のサービス品質向上関連業務を経てCA職に完全復帰した白鳥裕子氏(写真=帆足宗洋)


フロントオフィスとバックオフィスの架け橋に


──それでは、お2人のこれまでのキャリアと、配属先での業務について教えてください。

吉村:私の場合、2014年にANAに中途入社し、2021年3月まで乗務をしていました。その年の4月から一年間、SAとして外部出向することになりました。IT系のベンチャー企業で、デジタルマーケティングの領域でコンテンツ制作のコンサルタント業務などを行う事業部に配属されたのです。その会社はANAの新YouTubeチャンネル「BLUE SKY NEWS」の企画・運営に携わり、CA動画の企画、構成、撮影などを担当しました。

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そして2022年の4月からは、ANAグループの顧客マーケティングを担う「ANA X」のデジタルマーケティング部チャネル企画チームで、ソーシャルメディアのANA公式アカウントの管理や運用を担当しています。同時にCA職の資格維持のために定期的にフライトもしています。

前職の外資系航空会社を含めればおよそ10年間、CAとしての専門性を高めることばかり考えてきたため、デスクワーク自体が初めて。正直、異なる職掌での仕事は最初、戸惑うことばかりでしたね。専門用語を覚えるところから始めました。

白鳥:私は今年4月にCAに完全復帰したのですが、それまでは飛行機の安全と定時運航を管理する「オペレーション品質推進部」という部署で、4年間、サービス全般業務を担当していました。

客室サービスに関わるマニュアルの改定や業務連絡の対応など、業務は多岐にわたりましたね。

例えば、2019年5月に東京−ホノルル間で新規就航したエアバスA380型機、愛称「フライングホヌ」があるのですが、当時、新しく導入する機材の搭載に関する取り決めや、サービス手順の調整を行いました。就航後には実際に自分もCAとして乗務し、マニュアルの課題を見つけて改善するところまで行いました。

また、各客席にドアが付いていることで話題にもなったビジネスクラス新シート「THE Room」が装備された機体での、新機材導入にあたってのサービス調整などにも関わりました。導入後も日々のフライトに関するCAからの品質報告をモニターし、オペレーション面での課題解決や改善対応などを行っていました。

CAの目線で「感染防止対策」の開発も


白鳥:またこのコロナ禍の下、ANAグループでは、「ANA Care Promise」と名付けた新型コロナ感染防止対策に取り組んできました。接触機会を減らすことが社会全体で重視されてきたなか、航空業界、具体的には機内でも「Withコロナ対応」の新しいサービスが求められ始めたのです。

私はこの新しい取り組みの実施に向けて、CAが機内で速やかにお客様対応できる最適解のサービス開発に向けての文書化の作業や、マニュアル動画作成に携わりました。

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社内にはもちろん、現場CAがお客様のご希望に合わせて臨機応変に判断、行動する方針がもともとありましたし、サービスの基本を記したマニュアルもありました。今回は、環境の変化に即してそのマニュアルを改定する作業でした。
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文=堤直子 編集=石井節子 写真=帆足宗洋

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