ANAの「地上でも働くCA」 機内で鍛えた逆算仕事術で活躍

ANAグループ会社「ANA X」での勤務の傍らCA業務を兼務する吉村祐子氏(右)、航空機のサービス品質向上関連業務を経てCA職に完全復帰した白鳥裕子氏(写真=帆足宗洋)

新型コロナウイルスの感染拡大にも後押しされ、「働き方多様化」の波は一気に加速した。いまやワークスタイルの見直しは、企業にとってもワーカーにとっても避けられない重要な課題となっている。

業界・業種の特性を活かした就業の形をおのおのが模索するなか、航空業界の社員出向が大きな注目を集めたことは記憶に新しい。

中でもANAは、CA(客室乗務員)を「地上スタッフ部門に配属する」ことを積極的に推し進め、異なる職掌での勤務で社員のスキルを磨き、顧客サービスにもプラスの成果をあげるという施策を「コロナ以前」から始めていた。

一つの企業に属し、いわば「専門職」であるCAでありながら、敢えて異なる職掌への業務経験の扉を叩いたANAの現役CAに話を聞いた。

ITベンチャーやANAグループ会社に出向してSNSを活用したデジタルマーケティングに関する業務とCAの業務を兼務する吉村祐子氏と、航空機の安全運航やサービス品質向上に向けた調整業務を担う部署での勤務を終えて今年4月からCA職に完全復帰した白鳥裕子氏。それぞれの「キャリアの選択」から見えてきたものとは。


CAに任される地上勤務の仕事とは


──ANAのハイブリッドキャリア制度について教えてください。

白鳥:現在ANAに在籍している多くのCAの中には、定期的に乗務をしながら、機上での業務で培ったスキルや経験を内勤の仕事に生かしているCAがいます。彼女たちは「SA(スタッフアドバイザー)」と呼ばれます。

SAは、機内の安全を司る部門やサービスを企画・設計する部門、訓練を企画・運営する部門、人事採用や教育研修を司る部門などANAグループ内の企業・部署に幅広く配属され、地上勤務を行っています。ANAのCAが活躍する場は、空の上だけではないのです。

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──SA(スタッフアドバイザー)導入のきっかけはやはり、コロナですか?

吉村:SAはコロナ禍で生まれた職種と思われがちですが、実は、この制度自体は以前から実施されているのです。

ANAには、どのようなことがお客様に喜ばれ、逆にどのようなことが課題になっているのかを直接感じたことがある人財こそが、お客様の気持ちに寄り添ったよりよい商品やサービスを届けられるというポリシーが根付いています。それはCA職でも例外ではありません。
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文=堤直子 編集=石井節子 写真=帆足宗洋

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