オフィス復帰を巡るアップルと社員の攻防
アップルは在宅とオフィス勤務を組み合わせたハイブリッド型勤務の新方針を打ち出し、ソフトウエアエンジニアら従業員に対して9月5日から少なくとも週に3日はオフィスで勤務することを求めた。エアビーアンドビーやツイッターなど他のテック企業は「永久的」遠隔勤務を許可しているのに対し、アップルは従業員のオフィス復帰を積極的に求めてきた。
ティム・クックCEOは、同社の豪華なオフィスに従業員を呼び戻そうとしてきた。同社のオフィスでは、大半の従業員の自宅にはないような高級備品・設備が多くあるが、それでも従業員側はオフィス復帰に抵抗。高給取りのソフトウエアエンジニアと従業員はクックの要請を無視し、遠隔勤務を続ける意向を示している。
求人市場が白熱している状況で、トップクラスの技術者は年80万ドル(約1億1000万円)もの高給を要求し、自分が公平に扱われていないと感じたらもっと給料の良い会社に転職することをいとわないことを会社側に明確に示している。アップルをはじめとするテック企業は、優秀な人材が辞めるのを恐れ、その要求をのむだろう。
しかし、従業員の優位が続くのは経済が堅調な間だけだ。景気が後退すれば、企業がFRBの量的引き締め(QT)を受けてコスト削減に動き、大幅な人員削減が行われる。
市場の悪化により起きること
市場が悪化すれば全てが変わる。他社からの誘いはなくなり、ソフトウエア開発者は力を失う。転職の機会がなければ、失職を恐れて少なくとも週2日のオフィス勤務も受け入れるだろう。
アップルのリクルーター削減には警告の意図があり、社員に対して「いい気になるな。自分は思っているほど安全ではないかもしれないぞ」と伝えるものだ。
人材を巡る競争と、多くの人が会社を辞める「グレート・リジグネーション」のトレンドに伴い、給料は大幅に増えてきた。経済が悪化する中、報酬が永久に増え続けるわけにはいかない。企業は給料や賞与、個人の経費、交通費、無償の食事提供や福利厚生を削減するだろう。リクルーターの削減は、今後起きることを示す予兆だ。
(forbes.com 原文)