フロッシーを使うには、サインアップやメンバーシップ料金は不要で、サービスを利用しただけ支払うモデルとなっている。利用者は、フロッシーで歯科医院を見つけて診察予約を取ることができ、さらに、現金払いに比べて最大50%の料金割引を受けられる。
フロッシーは、厳選された歯科医ネットワークと直接交渉することで割引料金を実現しており、価格は保険会社が支払うものと同等に設定されている。フロッシーはこのような差額を利用して、患者たちに割引価格を実現しているのだ。
フロッシーの共同創業者でCEOを務めるマイルズ・ベケット(Miles Beckett)は、「ヘルスケア業界全体の仕組みが非効率であるせいで、小売価格と実売価格に常に差が生じている」と指摘する。「一般消費者にとって、実際の交渉後の価格でサービスを受けるのは困難だ」
歯科治療へのアクセスは、今まさに重要性を増していると言っていいだろう。2022年3月にデルタ・デンタルプラン協会がおこなった調査によると、2022年に歯科医の診察を受ける予定だと答えた米国の成人の割合は94%にのぼる。こうした高い数値はおそらく、パンデミックの間じゅうメンテナンスが先送りされていたせいで、需要が急増しているためだろう。また今度、と言いつづけてきた小さな問題に、そろそろ向き合わざると得ないというわけだ。
多くの米国人にとって、歯科治療へのアクセスは長年の課題だ。
2020年に米国人が歯科治療に支払った金額は合計約530億ドルにのぼる。
米国人の91%が医療費の支払いを補う健康保険に加入している(未加入者は2800万人)のに対し、歯科治療をカバーする保険に加入していない人は、推定7600万人にのぼる。
米国の高齢者に注目すると、歯科治療へのアクセスの状況はさらに悪い。メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険制度)対象者の約半分は、歯科治療費の支払いに保険をまったく利用できない。過去1年間に1度も歯科医院を訪れていない人の割合はこれと一致する。
金銭的負担は、歯科治療における重大な障壁となっている。カイザー・ファミリー基金の調査によれば、35%の人々が、金銭的理由から歯科治療を先延ばしにしたり、予約をすっぽかしたりしている。他のどんなサービスよりも高い数字だ。
ベケットは医学部の外科コースで学んだが、医学の道に見切りをつけたあとは、二度とヘルスケアに関わることはないと思っていた。手術や学術研究は好きだったが、医療制度には不満が募るばかりで、自分がシステムの歯車のひとつになった気がしたのだ。