148のツイートから生まれた映画「Zola ゾラ」の危険な魅力

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「私とこの娘(ビッチ)の物語を聞きたい?」という主人公の少々露悪的なセリフで始まる映画「Zola ゾラ」は、148のツイートから生まれた。

アメリカ中西部の工業都市、デトロイトの「フーターズ」で働いていた19歳のアザイア・キングは、2015年10月27日、知り合ったばかりの女友達と出かけたフロリダ州タンパへの旅の模様を連投でツイートし始める。

ユーモアを交えながらもリアルな呟きは、やがてアザイアが巻き込まれていく危険な状況を伝え始める。犯罪の匂いさえ感じさせる彼女の物語は、瞬く間に拡がり、フォロワーたちを夢中にさせる。

彼女のツイートは「The Story」と呼ばれるようになり、にわかな友情とそれに続くスリリングな展開に、ミッシー・エリオットやキキ・パーマーなどの有名アーティストたちも注目。彼女たちがリツイートを始めるやいなやファンの間にも拡散していったという。

この反響にハリウッドもすぐに反応し、映像化に向けたプロジェクトが動き出す。2021年6月、19歳のアフリカ系アメリカ人・アザイアがつぶやいた148のツイートは「Zola ゾラ」という映画となり、全米1468館で公開され、興行ランク入りも果たす。

また公開に先駆けて、インディペンデント映画を対象としたサンダンス映画祭でもプレミア上映され、高い評価を受けた。


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主人公は常に主体的に行動


映画「Zola ゾラ」はまさにネットから生まれた作品だと言ってもよい。メガホンを取ったのはジャニクサ・ブラヴォー監督。アフリカ系アメリカ人である彼女は、アザイアのツイートを読んだ瞬間から、彼女の物語を映画化したいと考えていたという。

「この物語はインターネット世界を映す鏡であり、ある意味インターネットそのものです。手のなかの携帯電話と目の前のコンピューターのなかで育ったものだから。この物語はソーシャルメディアが、いかに私たちを結びつけるかについてのラブレターでもあるのです」
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文=稲垣伸寿

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