ノーミーツが「世界同時演劇」に挑戦 7カ国をつないでリアルタイムで演劇


メインキャストは、6月に全世界から公募した。想定以上の反響があり、13カ国から約200人もの応募があった。その中からオーディションで9人を選出。日本からはノーミーツ常連俳優のオツハタら、中国からはweiboのフォロワーが100万人超えのコスプレーヤーSherryらが参加する。



「世界とつながるのが難しい時期だからこそ、『他の国の人と一緒に企画をしたい』『この時期だからこそオンラインでできることをやりたい』などと、我々の活動に共感してくれる人がすごく多かったんです」と、企画・プロデュースを務める梅田ゆりかは語る。

メインキャストの9人は、一人ひとりにヒアリングを重ねて、パーソナリティや居住国の特性を脚本に盛り込んだ。そうして、グローバルで個性豊かなストーリーが練り上がった。


梅田ゆりか

さらにキャストたちそれぞれが、小道具や衣装、ヘアメイクの準備などにも協力。現場にスタッフを派遣できないため、日本から郵送されてきた小道具をセッティングしたり、自ら衣装を考えたりと、演技以外でも作品に携わっている。

「今回、メインで参加しているスタッフは50人程度ですが、その全員が役職に関係なく脚本から演出までフラットに意見を出し合っています。それが『ノーミーツ流』なんです」(小御門)

「演劇」という表現媒体の問い直しに


本作に込められているのは、コロナ禍で逆境を乗り越えて新しい一歩を踏み出そうとする人へのエール。それは、自身も本業で海外と関わる仕事をしているという松本の原体験とも重なる。

「自分のようにコロナ禍でやりたいことができなくなった人や、人生を変えるような決断をした人もいると思います。そんな方々を前向きな気持ちで支えたいという思いで、この作品を企画しました」

一方で、29年間の人生で一度も海外に行ったことがないという小御門は、違う視点から作品への思いを語る。

「旅行にあまり興味がない僕のような人にとっては、『演劇という表現媒体の問い直し』という視点でも楽しんでいただけると思います。演劇は同じ時間に同じ場所でやらないと成立しない表現媒体だといわれてきましたが、通信の力を使えばそれを超えられる。『同時性』を担保しながら『同一性』を拡大できるんです」

つまり、演者や観客が1カ所に集まってなくても、役者が演じているものを観客がリアルタイムで目撃できるという体験は、「演劇」的なものになるのでは、という考察だ。

「こうして逆説的に考えることで、本質の問い直しにもなるから面白いですよね」


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この世界同時演劇の取り組みは、すでに世界で注目を集めている。

「海外の団体からいくつか問い合わせも来ています。世界的に、国境を越えたモノづくりや活動に興味がある方は多いけれど、ノウハウがない状態なのだと思います。今回は実験的に行う上演ですが、このノウハウを生かして次のプロジェクトにつなげていきたいです」(梅田)

ノーミーツの新たな挑戦は無事成功するのか──。その成果は、生配信で明かされる。

文=田中友梨 画像提供=ノーミーツ

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