日本を中心に、南アフリカ、中国、メキシコなど5大陸7カ国のキャストとオンラインでつながり、リアルタイムにオンライン演劇を披露。全世界で無料配信される。
ノーミーツはコロナ禍の2020年4月に「会わずにつくる」劇団として結成され、これまでに演劇、ドラマ、番組、映画など50以上の物語を生み出してきた。旗揚げ公演『門外不出モラトリアム』など自主長編公演に加えて、ジャルジャル×ノーミーツ コメディ演劇『夢路空港』などコラボ公演も多数開催し、多くの支持を集めている。
そんな中、今回新しい挑戦として選んだのが、世界でもほぼ前例のない「世界同時演劇」だ。
チャット欄にいろんな国の言語があふれたら
東京にある1軒のユースホステル「トマリギ」。かつては海外からの旅行者などで賑わっていたトマリギだが、コロナ禍で旅行客が減り、ついには閉業に追い込まれた──。そんなシーンから舞台が始まる。
物語は、トマリギの宿主であるタカハラと友人のクシダが、引き払い作業中に過去の滞在客の「忘れ物」を見つけるところから展開する。2人は、世界中に住んでいる「持ち主」たちに、過去の宿泊客リストを頼りに連絡を取ろうと試みるが……。
『Lost and Found』より。日英中の多言語字幕が付く
コロナ禍でつながりが絶たれたかのように見える世界で、私たちから取り上げようのないものを、もう一度思い出させてくれるような作品だ。
発案したのは企画・プロデュースの松本祐輝。
「過去に国内で福岡と東京をつないでオンライン演劇をしたことがあって、その成功体験から世界でもできるのでは、と考えたんです。チャット欄にいろんな国の言語があふれたり、国境を超えた対話が生まれたりするといいなって」
松本祐輝
キャストには13カ国から約200人が応募
上演に至るまでにはいくつものハードルがあった。言語の壁や時差があるゆえに、脚本、キャスト集め、稽古など、あらゆることがいつもどおりにはいかなかったのだ。
脚本・演出の小御門優一郎によると、ボツにした脚本もいくつかあった。
「脚本によっては、窓の外の明るさが違ったり、天候が違ったりすると違和感が出るケースもあります。あと、翌日や一週間後などと日付をまたぐストーリー展開も、タイムゾーンがバラバラの場所をリアルタイムにつないで演劇をすることの良さが消えてしまうんじゃないかと思って避けました」
小御門優一郎