メキシコ湾の原油流出事故でイルカの遺伝子に異変、米研究

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12年前にメキシコ湾で発生した米国史上最大の海洋石油流出事故が、ルイジアナ州の沿岸で暮らすバンドウイルカに遺伝的変化をもたらしたことが判明した。全米海洋哺乳類財団の科学者がまとめた論文が8月24日、科学ジャーナル「PLoS One」に掲載された。

2010年に発生したディープウォーター・ホライズン号の原油流出事故では、2億1000万ガロン以上の原油がメキシコ湾に流入したが、その影響でルイジアナ州バラタリア湾のバンドウイルカは免疫反応に加え、骨格の変化や細胞機能不全などの変化を示したという。科学者らは、バラタリア湾のイルカとフロリダ州のサラソタ湾付近にいるイルカのRNAサンプルを比較した。

最も劇的な変化は、事故から3年後の2013年に記録され、フロリダ州よりもルイジアナ州の沿岸で調査したイルカで顕著にみられたという。

また、サラソタ湾のイルカの繁殖率は83%であるのに対し、バラタリア湾のイルカは約20%で、繁殖率が4分の1に低下していることが判明した。バラタリア湾のバンドウイルカに関しては、事故の影響による生殖機能、心臓機能、免疫機能の低下が起こったことが、これまでの調査で分かっていた。

ディープウォーター・ホライズンズ号からの原油流出は、2010年4月に11人が死亡した爆発事故から87日間続き、8万羽の鳥類や6000頭以上のウミガメ、2万6000頭近くの海洋哺乳類が死亡したと推定されている。今回の論文の共著者のSylvain De Guiseは、ルイジアナバンドウイルカの個体数が現在もなお回復していないとNBCニュースに語った。

事故の発生を受けてさまざまな環境修復プロジェクトが提案されたが、それらのプロジェクトが意図しない致命的な結果につながる懸念もある。3月に発表された全米海洋哺乳類財団の研究では、ミシシッピ川からバラタリア流域に淡水を供給する計画が、海水の塩分濃度を下げることにつながり、イルカの個体数を減少させる可能性があるとされた。

編集=上田裕資

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