今年4月にローンチしたばかりの建材業界向けのバーティカル(業界特化型の)SaaS「建材サーチ」を手掛ける「Archi Village(アーキヴィレッジ)」だ。
同社のCEO竹内将高(たけうちまさたか)は、「マーケティング費用はゼロで、カスタマーサポートは営業が兼ねている」と話す。低コストかつ短期間で結果を生み出した背景には、2021年まで在籍していた日本を代表する優良企業「キーエンス」で培った営業経験がある。竹内にそのメソッドを聞いた。
Archi Villageの創業は2022年2月。「スタートアップファクトリー」を謳い、バーティカルSaaSの創出を事業とする「BLUEPRINT(ブループリント)」が出資し、スピンアウトした企業だ。
ブループリントでは、事業アイデアを見つけると6カ月間、市場調査や製品開発を行う。その期間に5社以上の契約を取り付けることができれば法人化し、失敗すれば撤退をするという。
Archi Villageの建材サーチは、まさにその条件をクリアして生まれたサービスだ。
ターゲットとするのは、エクステリア(門扉、フェンス、テラスといった屋外の構造物)メーカー。従来は「紙」で管理されていた建材カタログをデジタル化し、価格、規格表、寸法図など、点在する建材の商品情報の集約をする。企業ごとにページが用意され、カテゴリー、ジャンル、キーワードから商品を検索できる。
メーカー側は建材商品への問い合わせ対応を大幅に削減でき、手間やコストがかかる紙カタログ制作の負担も軽減できる。商材を選定するセレクター(デザイナーや設計事務所、代理店)にとっては、短い時間で複数社の商品を検索できるため、施主(建築工事の発注者)への最適な建材の提案が可能になる。
今後は、見積もりの自動化や建材の売買も建材サーチ上でできるよう、機能を拡充していく予定だ。Archi VillageのCEO竹内は次のように語る。
「PMF(顧客のニーズを満たしたサービスが提供できている状態)はプロダクトのローンチ前に達成させます。顧客となるエクステリアメーカーは現在の上位4社で市場シェアの8〜9割近くを占めています。彼らを抑えることで、他社も参入せざるを得ない構造をつくり出しています」
2カ月で50社を訪問
とはいえ、竹内自身は建材業界に身を置いた経歴があるわけではない。完成したプロダクトも人脈も経験もない。そのなかで、どのように顧客となった企業を開拓できたのか。