それを可能にした1つが、「電話手法」にある。
「不特定多数に向けてかけられた電話って切りたくなりますよね。大事なのは電話の相手に『自分にとって得する話』と思わせることや「『会う理由が明確』であることなんです。
相手の会社のことを事細かに調査して、『◯◯さんはこういう業務をされていて、こんな困りごとがありませんか』と相手の属性に触れる会話をしていけば、なかなか無下にはできないですよね。
また、現場社員に『このサービスで売り上げが上がります』と提案しても、刺さらない。なぜなら彼らは経営のことを念頭に置いて働いているわけではないから。それよりも、いまの彼らの業務がどう改善されるかを伝えるべきなのです。
対面での提案では、商材の特徴を理解してもらい、メリットを納得してもらい、そのうえで『結果的に利益が上がるので、これを社長に説明してもらえますか?』と訴える。すると自分事化され、上層部に話を持っていってくれる可能性が高まります」
ただ、新規のアポイントを取り付けて、商談を終えてもそれでゴールではない。次の取引先候補となる会社への「紹介」を必ずもらい、人脈を広げていくという。
建材業界だけでなく、業界のハブとなる人材が在籍する業界誌「週刊エクステリア」編集部にも協力を仰いだ。仮にあるメーカーから一度断られても、編集部から建材サーチを紹介してもらうことで、再度、商談の場に立てる可能性が生まれるのだ。
竹内は2カ月で建材業界を精力的に回り、建材サーチの構想と自らの名前を売り込んだ。メーカーとの契約はもちろん、建材の買い手であるセレクターからの承諾を得ることも事業を進めるうえで不可欠だったため、この期間に訪れた企業は50社を超える。
Archi Villageの母体となったブループリントの創業者、安田光希(やすだこうき)はこう振り返る。
創業者の安田光希
「ゼロイチフェーズで難しいのは情報のインプットです。特にバーティカルSaaSでは、ネットで検索できるものに限界がある。そこで問われるのは、まず業界の顧客となる人たちに会って話しができるかどうかなんです。竹内は新規のアポを創出する能力がめちゃくちゃ高いんですよ。短い時間でステークホルダーに会いに行き、建材サーチという構想への業界全体の熱量が冷めないうちに、各社を巻き込んでいけたのは賞賛すべき点だと思います」
電話と紹介を繰り返すことで得られるのは人脈だけではない。もう一つは、業界への深い理解だ。関係者からも「業界人より建材に詳しい」と言われるほどで、プロダクトそのものへの信頼も生んでいる。