そう問い続けるのが、Awwの代表取締役を務める守屋貴行氏。大学卒業後、映像プロダクションのロボットに入社し、映像プロデューサーとして活躍してきた。その後、エウレカへの参画、NION(ナイオン)設立と、クリエイティブをテクノロジーと組み合わせ、サービスとして成長させるチャレンジを続けてきた。
Awwでは、スーパーフォトリアルな3DCGを駆使し、SNSの世界に存在するバーチャルヒューマンを生み出した。
ファッションや自動車メーカーをはじめとして、国際的に活躍するバーチャルヒューマンは、代表格となるimmaの他に10人ほどおり、ellaはディズニーのバーチャルヒューマンとして活動する。コンテンツの世界最高峰とのコラボレーションまで実現する守屋氏は、クリエイターの変化、また今という時代を背負うテーマについて、どうとらえているのか?
Z世代、α世代の「伝えたい意欲」
「コンテンツさえ作れれば」と映像のクリエイターとして活躍し始めた守屋氏。2000年代以降、映像記録はデジタル化されつつある時代だったが、それでもベータカムを使った編集をしていたし、MiniDVテープに1日中、何時間も映像をため込む生活をしていた。とてつもなく時間がかかる手作業……。確かにものづくりの手応えもあったし、今でもそうした時間をかける作業に価値を求めるクリエイターも少なくない。
コンテンツを作ること、またそのコンテンツがメディアを通じて伝搬し話題になること。あるいはそうした数字が讃えられること。確かにクリエイターとしての成功のわかりやすい指標といえるかも知れない。しかし、2つの意味で異なる考え方を持っていると守屋氏は話す。
「SNSが広がる中で、コンテンツの拡散や話題になったかどうかも数字で表れるようになってきました。あるいはインフルエンサーマーケティングでは、数万という数字を作って顧客のKPIを満たすこともできるようになります。
しかしSNSネイティブな小学生に見せると、それが広告かどうか見抜けるほどに賢く鋭いのです。その背景に流れているもの……熱量とともに熱狂を作っていかなければ、いくら大きな数字があっても伝搬しないし、その場限りで効果がでない。なにより、好きになってもらえません。
同時に、世界はもっとフラットになってきています。世界中のさまざまな事実が掘り起こされるようになり、その様子を世界中の人々が固唾を飲んで見守ります。小説や映画よりも、事実の方がおもしろくなってきているのです。だから人々の生活の見栄えが良い表層を扱うSNSは廃れると思うし、Netflixでドキュメンタリーが伸びているのです」