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2022.09.09

21世紀は「パーパス経営」の時代。資本主義からDXを駆使した「志本主義」へ

パーパス経営とは、これまでの企業経営に多く用いられてきたビジョンやミッションを外発的なものと位置づけ、より内発的な“パーパス”をドライバーとしたマネジメントスキームだ。日本におけるパーパス経営の第一人者、一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司は、SDGsの目標である2030年の先には、「パーパス=志」を基軸とする「志本主義(パーパシズム)」の時代が来ると言う。ポストSDGsで重視される「志」という目に見えない資産を蓄積して、これから企業の経営戦略と人材育成はどうあるべきなのか。持続可能性が強く求められる時代に、日本企業はDXを活用して、いかに強みを発揮すればよいのか──。


パーパス経営は21世紀の最強エンジン資本主義から志本主義へ


いまやパーパス経営は世界的な潮流になってきている。背景に何があるのか。「ネガティブな面では、リーマンショック、気候変動ショック、コロナショック、そして今年のウクライナショックといった一連のショックで、これまでの先が見えていた世界とはまったく異なる時代に突入した。先がわからなくなると、自分自身がしっかりした軸をもっていないと流されてしまう。なので、一度セットバックして自分たちの原点を見つめるという動きが出てきたことがあります」

一方、ポジティブな背景は、サステナビリティへ対応する流れだ。

「サステナビリティに関連して、SDGsの17のゴールがあり、日本企業はかなり努力していると思います。ただ、サステナビリティに対応すること自体は“存在資格”があるだけで、“存在理由”にはならない。存在理由がなければ存在資格もなくなり、社会から退場宣告を受けかねない。サステナビリティはどの企業も当然進めるべきですが、それは“規定演技”であって、やって当たり前。これからはその企業ならではの“自由演技”、“企業を通じて何をしたいのかの想い”が重要。それが各社ごとのパーパスづくりの流れになっています」

カネからヒトへ欲(グリード)から志(パーパス)へ


さて、最近、世界的にキャピタリズムが限界を迎えているとよく言われる。社会は何とかそれを延命させようとしているわけだが、名和はすでに耐用年数は過ぎていると言う。

「今までキャピタルというのはそもそも基本的にお金でした。ヒト・モノ・カネで言うとカネ中心主義、それ自体は耐用年月は過ぎていて、お金は社会に有り余っています。モノもかなりコモディティ化している。その中では、ヒト自体が非常に希少価値があり、ヒト・モノ・カネの中で、大きく見直されるべきキャピタルだと思います」

ヒト中心に価値観が変わると、パーパスという概念が強く作用してくることになる。

「これまで人の欲望が資本主義を動かしてきた。これに対して、明るい未来を何とかつくりたいという人の想いが動かす時代になってきています。私の大先輩である伊丹敬之先生(一橋大学名誉教授)はそれを人本主義と言っていましたが、私はもう一段深め、“パーパス=志”に基づく“志本主義”という言葉を使い始めました。

“志”は、士の心と書きます。“士”は、プロフェッショナルの意味で、求道者、つまり道を究める人。そういった人の想い、心が“志”になるんです。“パーパス”は存在意義と訳されることが多いですが、“志”はそれよりも日本人にわかりやすい。古来の想いも込められていますから、“志本主義”と名づけました」

そして、そんなパーパス経営を実現させるには、3つの共感要件「ワクワク・ならでは・できる」が必要だと提案する。

「まず、“ワクワク”。抽象的な、そのパーパスを聞いてワクワクすることがすごく大事。これがないと、取って付けたような話になってしまう。次に、“ならでは”。同業他社にはなく、その会社しかできないということ、そのひねりがとても大事。3つめは“できる”。それを聞いて、社員だろうと、お客さまだろうと、この会社ならできる、と実行が担保されることが伝わるかどうか。この3つが、パーパスをきれいごとで終わらせないポイントだと思います」

パーパス経営を加速する新SDGsの3要素


さて、日本でもSDGsへの対応が加速しているが、ゴールは2030年でもう10年を切っている。そろそろ2050年を見据えて考えましょう、と名和は違う時間軸から新たなSDGsを提唱する。

「そろそろ今世紀の後半をイメージする必要がある。今年入社した人たちは2050年になってもまだまだ現役で、我々は彼らの時代に責任をもたなくてはならないのです」

SDGsがゴールとして掲げる17項目は、いずれも社会課題であり、明確に需要がある。そのため、うまく本業の中で対応できれば事業成長につながるが、安易に取り組むと赤字になりかねない。こうした分野では、イノベーションがない限り儲けるのは難しい。

「イノベーションを生み出す方法やツールはいろいろと存在しますが、やはり身近な道具立てはデジタルです。サステナビリティとデジタルの相性は最高で、切っても切れない関係です。サステナビリティを口先だけでなく、本業の中でしっかりと実践するには、デジタルを使ったイノベーションが必須で、その意味で、提唱しているのが、“新SDGs”です」

「S」はサステナビリティ、「D」はデジタル、「Gs」はグローバルズで、新型コロナや米中摩擦などにより世界が分断された状態を、再結合させていく必要がある、という意味も込めて複数形としている。

「3つの要素が交わるところにパーパスがある。パーパスがあることによってこの“新SDGs”のサイクルが回り、パーパス経営(“志本主義”)も成り立っていく。新型コロナの流行は、その速度を10倍以上速めたと思います」

パーパス経営で利益は出せるのか重要さを増す無形資産の拡大


さて、イノベーションの結果、パーパス経営は利益に結びつくのだろうか。結論から言うと、パーパス経営をしっかり実践できれば、売上の増加とコストの削減につながるという。

「パーパス経営を実践している企業は、まず短期的には、エシカル消費志向などによる後押しで売り上げを伸ばすことができます。併せて、パーパスが顧客からの共感による後押しを受け、広告の無駄打ちを減らし、宣伝コストを下げることができる。また、デジタルの力を駆使することで、オペレーションコストや人件費も下げられる。正しくデジタル投資をすれば、短期でリターンが出る。さらに、人にしかできない創造的な時間の使い方をすれば、人件費は半分、もしくは3分の1にまでになるといわれている。これは単なるコストカットではなく、一人あたりの生産性や創造性も2倍、3倍に向上していくという意味ですから、トータルでみれば桁が変わる効果が期待できます。

会社が持続的に成長していくうえで、大きな課題として、コンプライアンスリスクがあります。これも、社員へパーパスが浸透すれば、社員一人ひとりの誇りにつながり、コンプライアンス面でのリスク回避にもつながります。

長期的な会社の取り組みによって、形成される無形資産としてよく挙げられるもののひとつに、ブランド資産の向上がある。さらに長い年月をかけて知的資産(ノウハウ)のさらなる蓄積も生まれ、さらにそれが新たな事業機会を呼び込むことにもなる(ネットワーク資産の向上)。そしてすべてに紐づくものとして、人財資産の価値向上も実現できる。こうした4つの無形資産の存在が、将来の売り上げやコストに還元されることになる。このサイクルがパーパス経営にとって極めて重要となってきます」

パーパス経営実現にDXが果たすべき役割日本は“たくみ”の“しくみ”化を


パーパス経営のカギを握るのは最終的に何か。ここでは近年、どこの企業でも導入に躍起となっているDXの観点から聞いた。

「DXは、要するにデジタルを活用して企業経営にイノベーションを起こし、業務やビジネスモデル自体を変革していくこと。イノベーションには、スピードとスケールが必要ですが、残念ながら日本ではスピード感に欠け、POC(Proof of Concept:新しい概念や理論、原理、アイデアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーション)の域を出ないものが多い。欧米や中国では、それをいち早く社会実装して、どう大きく育てるかの勝負をしているのに、日本の企業はスピード感がなく、スケールが圧倒的に小さい。そこを本当はデジタルを使って撃ち抜かなくてはならない」

デジタル化を阻むのは、日本独特の職人気質もある。しかし、それもプラスの方向に使えば解決は容易だという。

「日本は匠(たくみ)が得意で、とにかく人の力でやってしまう。しかし、スピードとスケールが必要となると、人の力だけでは太刀打ちできない。そこで、匠をソフトウエアやアルゴリズムなどの仕組みに落とし込むことで継承する。匠が仕上げた新しい技はどんどん仕組み(定型業務)に落として、また匠の仕事に移っていく。それを繰り返すことで日本の“たくみ”がどんどんレベルアップしていく。“たくみ”の仕事を“しくみ”化したらスピードとスケールは10倍化できます」

そのような仕組み化をスピーディに進めることにより、欧米の標準化を進める企業に比べ、付加価値の高い製品やサービスを提供できるようになる。デジタルのインフラはすでに揃っているので、いかにそれを使いこなすかが重要だ。

「DXでいうと、Dは当たり前で、Xでつまずく企業が大変多い。現場は忙しくて、匠の仕事に追われてしまっている。イノベーションの中でデジタルを活用し、まずは現場の業務を変革していく。いかにムダを省くか、ムダな仕事をやめるかが問題解決の1丁目1番地で、小さな取り組みから大きく、経営全体に変革の波を広げていくことが肝要です」



パーパスを阻む日々のムダ間接業務DXの役割とその貢献度


パーパスを実現できない最大の壁は現業の忙しさだ。日々、ルーティンで仕事が埋まる。残業禁止だとなおさらだ。新しいことなどやっている暇がない。しかし、その忙しさをいかに軽減するかが次につながるのだ。

「ほとんどの仕事が非生産的なルーティンワークの繰り返し。9割が非生産的、クリエイティブな仕事は1割にも満たない。でも、定型化された仕事は意外に心地よかったりするわけです。考えなくても時間が経てば、給料がいただける。でも、そういう作業は、“ブルシット・ジョブ(ムダな仕事)”と呼ばれて、今後はどんどんAIやロボットに取られてしまう。これからは、90%のルーティンワークはデジタル化され、10%しかできなかった創造的な仕事が100%になる。少なくとも50%になるだけでもすごいことだと思います。人は人しかできない、創造的で競争力を生み出す仕事をして、給料をいただくべき」

仕事は付加価値を生み出す直接業務と定型で反復作業が続く間接業務に分けられる。直接業務のDX化には同業他社との差別化などがあり、ゴールをイメージできないまま失敗するケースが非常に多い。一方、間接業務は決まった業務、かつ付加価値を産まない業務なので、DXとの相性が非常によい。間接部門の場合でも、パーパスを持った社員が取り組むことで、その改革の幅は非常に大きくなる。

「組織全体の目的のために、自分がその一躍を担っていると思うことは大事なことです。間接部門は、直接部門の社員がよりクリエイティブで付加価値を生む仕事に走れるように間接業務をまとめて引き取り、ムダな仕事で走りにくいことがないよう支援し、もう一度走れるようにする部門です。間接部門が仕事のムダを一手に受け止めることで、会社全体のサステナビリティやパーパスと文脈を揃え、かつ、お客さまにも満足していただける環境を作り出している。今後は、間接業務のムダを一手に受け止めるだけではなく、ロボティクスやAIなど徹底的なデジタル化で、間接業務をなくすくらいの改革をし、全社の生産性を徹底的に引き上げることができると思います。ある種、間接業務DXは取り組みやすい領域、かつ社員の恩恵も広く感じられ、パーパスと関係の深い仕事かもしれません」

最後に、5年連続「働きがいのある会社」で1位(Great Place To Work® Institute Japanが主催する働きがいのある会社ランキング中規模部門)の座を獲得しているコンカーについて聞いた。

「“働きがい”というのは、実はよく言われる“働き方改革”で生み出せるものではないと思います。働き方改革はワークライフバランスとも言われますが、ワークとライフを分けて、8時間は会社で働き、自分が自由に使える時間を増やそうという考え方。これは19世紀的、マルクス的な労働観だと思います。そうではなくて、ライフ全体の中にワークがなくてはいけない。ワークも、家庭も、プライベートも融合させ、人生を充実させてこそのライフです。だからワークインライフ。仕事はやらされ感ではなく、自分が本当に取り組みたいこと、実現したい社会づくりにつながっていなければならない。それが働きがいです。コンカーは、外資系IT企業ながら5年連続働きがいランキング1位というのには驚いています。“経費精算のない世界“を実現したいという夢とそれに共感する志を持つ社員が集まるコンカーは、まさにパーパス経営実践企業と言えると思います」


名和高司(なわ・たかし)◎一橋大学ビジネススクール客員教授。東京大学法学部、ハーバードビジネススクール卒業。三菱商事を経て、マッキンゼーで約20年間勤務。自動車・製造業プラクティスのアジア地区ヘッド、デジタル分野の日本支社ヘッドなどを歴任し、2010年より現職。多くの企業の社外取締役、シニアアドバイザーを兼任。2014年よりCSVフォーラムを主宰。2022年より京都先端科学大学教授を兼任。著書に『パーパス経営』『経営変革大全』『全社変革の教科書』『CSV経営戦略』『シュンペーター』など多数。


#1 公開中| いまDXをRethinkする。まず取り組むべき最良の選択は、間接業務からのDX。目指すは「経費精算のない世界」だ。
#2 本記事| 21世紀は「パーパス経営」の時代。資本主義からDXを駆使した「志本主義」へ
#3 coming soon

Photographs by Shinzo Ota

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