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2022.08.27 08:00

ジョブズの未亡人が35億ドルを注ぐ「財団」の謎めいた実態

ローレン・パウエル・ジョブズ(Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

故スティーブ・ジョブズの未亡人で慈善活動家のローレン・パウエル・ジョブズは、カリフォルニア州の環境保護の顔役を、自身が35億ドルを注ぐ気候変動対策のプロジェクトに招き入れた。

カリフォルニア州の環境保護庁長官のジャレッド・ブルーメンフェルドは今年末に現在の職務を退き、パウエル・ジョブズが設立した「ウェーバリー・ストリート財団」の理事長に就任する。同財団の8月12日の発表によると、ブルーメンフェルドは、10年間で環境保護のために35億ドル(約4790億円)を寄付するという彼女の公約を実現するための責任者を務めるという。

「私たちの地球は気候変動という巨大な脅威に直面している。ウェーバリー・ストリート財団は、大胆で革新的なアイデアでこの危機に対処するために設立された。ジャレッド(ブルーメンフェルド)は、複雑な課題に対処するための理想的なリーダーだ」と、現在58歳のパウエル・ジョブズは声明で述べている。

しかし、この財団が具体的にどのような活動や団体に資金を提供するのかは不明だ。同財団は声明の中で、ブルーメンフェルドが「炭素汚染を緊急に削減するために、世界中のコミュニティで行われている画期的な活動を支援する」と述べている。

2016年にパウエル・ジョブズが設立したウェーバリー・ストリート財団は、2019年までは「エマーソン・コレクティブ財団」と呼ばれていた。この財団は、2020年の税務申告によると30億ドル近い資産を保有しているが、その活動の詳細は謎に包まれている。

米国歳入庁(IRS)への申告書によると、彼女は2017年から2019年にかけて、約1億8500万ドルをNPO団体の「シリコンバレー・コミュニティ財団(SVCF)」のドナー・アドバイスト・ファンド(DAF)に寄付していた。DAFは、慈善活動用のファンドで、寄付金の使途や金額、寄付先、寄付を行うタイミングなどを寄付者が自分で決められる。DAFはまた、寄付による節税効果を最大化できる点がメリットだが、情報開示の義務がないため、資金の行き先を第三者が確認することができない。

イーロン・マスクもDAFを利用して節税を行っていると推測されている。

パウエル・ジョブズの広報担当者は、彼女のDAFの利用に関するフォーブスの質問に回答しなかった。

推定157億ドルとされるパウエル・ジョブズの財産は、主に亡き夫のスティーブ・ジョブズから相続したアップルとディズニーの株式によるものだ。彼女は2011年にジョブズが亡くなって以降、自身の投資・慈善活動団体であるエマーソン・コレクティブ財団に資金を投入し、この財団を通じて雑誌「The Atlantic」やNBAのワシントン・ウィザーズなどの株式を保有している。また、彼女はニュースサイトAxiosの初期投資家でもあり、Axiosは先日、Cox Enterprisesに5億2500万ドルで買収されることに合意した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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