30U30

2022.09.01

カニササレアヤコは何者か。音楽家、エンジニアとマルチな才能を発揮するお笑い芸人

雅楽芸人・カニササレアヤコ、28歳


しかし翌日の朝からは、普通に会社に出勤する生活に戻った。フリーだったので、各事務所から所属依頼が殺到するのではとも思ったが、実際は違っていた。

「こんなにもすぐ日常に戻るのかなって……」

そこで即気持ちを切り替えた。1週間と経たぬうちに、自らをプレゼンするメールを各事務所に送り始めたのだ。「はじめまして、R-1ファイナリストのカニササレアヤコと申します」と。

返事が返ってきた数社の中から「働きつつ芸人活動を続ける」という自らの条件にあったサンミュージックに所属した。担当マネージャーも「まさかR-1ファイナリストから直接連絡がくるとは。もうてっきりどこかに所属したと思っていましたから」と明かす。

その後は「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」(フジテレビ)や「笑点 特大号」(BS日テレ)、「ハマスカ放送部」(テレビ朝日)など数々のテレビ番組にも出演した。

旅芸人になるはずがロンドンで半年も足止め


そんな中、夫とともに世界をまわる旅芸人の武者修行に出ようと2020年3月にロンドンに旅立った。しかし、新型コロナウイルスの影響で即ロックダウン。なんとそのまま半年間も現地で足止めをくらった。

そんな災難を経て帰国後、笙の練習に身を入れていたら、今度は笙を演奏する仕事が増えるようになった。そこでもう少し力をつけたいと思い、東京藝大音楽学部の邦楽科を受験。無事合格し、2022年4月からは雅楽専攻科で学び始めている。



現在は大学生活が中心で、週5日大学に通ってソルフェージュや雅楽の歌、舞などを学んでいる。エンジニアとしては、週に2日だけ短時間勤務という形で「Pepper」のアプリ開発の仕事を続けている。

「とりあえずやってみてから考える」


今後は、お笑いのみでなく、雅楽器をつくる人や演奏する人を増やすなど、雅楽の普及にも貢献していきたいという。

「『興味をもったら自分にストッパーをかけず、とりあえずやってみてから考える』というのが私のモットー。お笑い芸人、学生、会社員など色々な面をもっているので、その相乗効果で多くの人に楽しんでもらえたら」

ちなみに、マルチタスクをこなす秘訣は「健康管理」だ。

「動画などを観ながらゆったりお風呂に入るのが好きです。あとは、栄養をとるためにレバーは欠かせません。業務用スーパーに行って、鳥レバーをキロ単位で買っています(笑)」

幾つもの目標を、次々と冷静かつポジティブにクリアしていく彼女。藝大でパワーアップした後の活躍が、今から楽しみだ。

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文=矢吹博志 構成=田中友梨 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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