知識も興味もないままエンジニアに
大学卒業後は「お笑いの仕事をして生きていきたい」と思いつつも、周りを見てそれだけをなりわいとすることの厳しさも自覚していたため就職。フレキシブルな働き方ができることからWebエンジニアを選び、働き出した。
当時はエンジニアに興味があったわけではなく、プログラミングの知識も経験もない状態だった。入社時のプログラミング試験はまったく解答できず、会社から再受験を求められたほど。再試験でも試験範囲をほぼすべて暗記して臨んだため、上司に「ほんとは何もわかってないでしょ。でもまあ全部丸暗記したのも偉いよ」と言われた。
入社後に驚いたのが「隣の人に何か尋ねるのもチャットで」というカルチャー。社内で人と会話を交わすことが少なかったため、お笑い芸人としては良くない環境なのでは、と悩み始めた。さらに、この会社が副業禁止だったため事務所を退所していたことから、よりフレキシブルな環境で働こうと転職した。
転職先は、ソフトバンクのロボット「Pepper」のアプリ開発をする会社。ロボット分野でも「コミュニケーション・ロボット」の開発に興味を持ったのだ。
予想外だった「R-1グランプリ」ファイナリスト
そして2018年、芸人としてピン芸コンクール「R-1グランプリ」に出場することを決意する。
最初は「1回戦に受かったら嬉しいな」程度の気持ちだったが、学生時代に賞を獲得した「雅楽ネタ」をブラッシュアップして臨むと、思いのほか勝ち進んでいった。「大変なことになってしまった」と学生時代のお笑いサークルの仲間に集まってもらい、喫茶店で急きょ作戦会議もした。
ただ、作戦はすべて机上の空論だった。当時はお笑いライブに出演しておらず、数年前の大学の卒業ライブぶりの舞台だったからだ。
「お客さんの前でネタをやるのが久しぶりだったので、笑い声が台詞にかぶるのを防ぐ『笑い待ち』などもうまくできなくて、予選を重ねる中で身につけていった感じです」
それにもかかわらず、準々決勝、準決勝と計5回の予選を勝ち進んで決勝へ。優勝はつかめなかったものの、大きな爪痕を残すことができた。
【R-1決勝ネタ】雅楽師モノマネ