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2022.09.28 10:00

スタートアップが熱い東北、産官学の躍動とイスラエルの存在

坂元 耕二
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イスラエルと東北の絆は11年前に遡る。東日本大震災が起きた際に世界に先駆けて医療チームを現地に派遣したのがイスラエルだったのだ。両者とも人口は900万人程度、地域内のGDPも同程度という共通点がある。一方でイスラエルは世界有数のイノベーションの地である。毎年約1,000社のスタートアップが生まれ、人口対比のNASDAQ上場社数世界一を誇るイスラエルは、常に世界を見据えている。

ここに東北が学べる知見は多い。こうした背景から駐日イスラエル大使館、日本貿易振興機構が主催し、現地のパートナーとして先述のスパークルが運営を行う「東北・イスラエルスタートアップ グローバルチャレンジプログラム」が始動した。

本プログラムでは、イスラエルの専門家や起業家から講義やメンタリング、ピッチ指導を受けることができる。海外からの声を取り入れることによって、国や文化を超えても伝わるロジカルな表現方法や海外投資家の視点を得られる。プログラムに参加したスタートアップは海外展開を見据えた経営方針の策定や国外の資金獲得に向けた具体的なアクションを進めているという。

日本のエコシステム・ビルダーたちの努力により、多くのスタートアップが日本から生まれている。より高い視座を持ち、広い市場を見据えたとき、海外投資家からの資金調達もスタートアップにとっては重要な道筋となる。

しかし、日本と海外では、好まれるデザインや表現方法も、投資家が興味を示す市場規模も大きく違う。筆者も、よく海外のピッチ大会に出場するスタートアップへの指導を行っているが、この違いを踏まえて準備ができているケースは本当に少なく、共に一から表現を練り直すこともある。それにより、企業や事業の魅力がどの程度伝わるのかが大きく変わる。海外にアピールするためには、こうしたギャップを理解することが非常に重要だということがわかる。

国内市場のみしか考えていないスタートアップも、自分達の可能性を簡単に閉ざさず、積極的に海外に目を向けてほしい。経営者自身の視野を広げるためにも、本プログラムのような機会は逃さずに参加してみてはどうだろうか。

ここまで、さまざまなサポーターがどのように「ソーシャルイノベーターの聖地 仙台・東北」を盛り上げているかをお伝えしてきた。最後に、これらの支援を受けたスタートアップ3社の生の声も紹介しよう。

2018年設立のヘラルボニー


「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、障害のイメージを根本から変容することを目指す岩手発のスタートアップだ。主に国内外の知的障害のある作家が描くアート作品とライセンス契約を結び、2000点以上のアートデータを軸に自社ブランドやライセンス事業を行っており、経済産業省が主催する日本スタートアップ大賞 2022では審査委員会特別賞を受賞した。

大田雄之介氏によると、アクセラレーションプログラムに参加したことで、事業計画・資金調達のアドバイス・パートナー企業のマッチング・海外進出に伴うメンタリングなど多くのご支援を得られたという。

2019年設立のAZUL Energy


クリーンエネルギーによる循環型社会の実現への貢献を目指す東北大学発スタートアップだ。次世代エネルギーデバイスとして期待される燃料電池や金属空気電池に利用される白金等のレアメタルを含まない高性能触媒の開発、製品化を進めている。

代表取締役社長の伊藤晃寿氏によると、「触媒」は、エネルギー利用の効率化に不可欠な素材で、脱炭素社会の実現に向けて、東北から世界に革新的な技術を届けるべく、自治体や公的機関との連携、アクセラレーションプログラムを通じてグローバルな視点で事業化を進められているという。

2021年設立のElevation Space


東北大学発スタートアップで、宇宙ステーションに代わるプラットフォームを開発している。現在2023年末の打ち上げに向けた宇宙から地球に帰還する人工衛星を開発しており、なんと創業1年ほどで補助金なども含めて約5億円の資金を調達している。

代表取締役CEOの小林稜平氏によると、投資家の中には先出のスパークルも含まれており、地方ならではの資金調達方法があることは大きなアドバンテージになると感じているという。

東日本大震災によって、大きな変化を余儀なくされた東北。その地に今、高い目的意識と社会貢献の心を持って、今度は自分たちの手で世界を変えていこうとするソーシャル・イノベーターたちが集積している。社会課題を自分ごととして捉え、本気で解決に挑む人々が育て上げてきた東北のスタートアップ・エコシステム。彼らだからこそ創れる未来が必ずあると信じている。

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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