介護・育児や生活費の危機的状況に対応する負担は、圧倒的に女性にかかっています。また、経済的な苦境にある女性は、精神的・肉体的ストレスも増えるため、個人的または仕事上でトラブルを抱えるという悪循環に陥っているのです。
世界的な失速
今年で16年目を迎えた世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップレポート」は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4つの分野を、ジェンダーに基づく格差のベンチマーク(基準)としています。また、労働市場におけるジェンダー・ギャップの拡大に世界的影響を与えた要因についても考察しています。
今年のレポートでは146カ国が調査対象となりました。ジェンダー平等では、アイスランド(ジェンダー・ギャップ90.8%解消)、フィンランド(86%)、ノルウェー(84.5%)が上位を占めています。
また、サブインデックスでは、医療へのアクセスにおけるジェンダー・ギャップは95.8%、教育は94.4%、経済は60.3%解消していますが、政治参加は22%と後れを取っています。どのサブインデックスも2021年の数値からほとんど変化しておらず、危機に見舞われたこの一年は停滞していることが分かります。レポートが示すように、格差を測定し、原因を理解することが、格差解消への第一歩となるのです。
グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2022 Image: 世界経済フォーラム
ジェンダー・パリティを加速する
ジェンダー・パリティは全ての人に利益をもたらします。ヒューマンキャピタル(人的資本)が多様であれば、企業はより創造的で生産的になりますが、それは経済の再建と再構築を進める過程に不可欠な資質です。女性が労働力に占める割合が多い国は生産的で包摂的、かつ持続可能な成長を遂げる可能性が高くなります。
そのため、ジェンダー・ギャップを解消し、パンデミックによる損失を補っていくことが、力強いリカバリーを早期に実現する上で重要です。
1. 政府と企業のトップは、影響を受けた産業に改めて焦点を当てる必要があります。これにはヘルスケアと教育を再評価して、いわゆるエッセンシャルワークを、日常生活を維持するために不可欠な職業とみなすことも含まれます。適切な報酬を支払い、専門性を向上させることが、こうした職業の重要性を認識することにつながります。