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2022.08.23 07:30

アメリカン航空のパイロットが20%の賃上げを要求

Getty Images

アメリカン航空のパイロット1万4600人が、今後3年間で20.4%の賃上げと勤務スケジュールの改善を求めている。このほど選出されたばかりのパイロット組合会長は18日「会社はパイロットをぼろぼろにしてきた」ため要求すると述べた。

7月に連合パイロット協会(APA)の会長に就任したマイアミ在住のボーイング737機長エド・ジッシャーは「賃上げ幅が20%以下であればパイロットは受け入れないはずだ」と指摘。会社は20.4%という数字を受け入れると思うが、遡及払いについては依然として問題だと述べた。

現行の契約は2020年1月に改定可能になった。APAは初年度10%、2年目5%、3年目5%の賃上げと遡及払いを加えた案を提示している。

ジッシャーは18日にアメリカン航空のハブ空港があるシャーロットを訪れ、APAのリーダーたちと会談した。「秋と冬季休暇のスケジュールの確実性と信頼性を高めるために、経営陣は今後30〜60日の間に仮合意する必要がある。今、事態は流動的だ」とジッシャーはインタビューで述べた。

現在、パイロット需要は大きい。大手航空会社はいずれもパイロットの雇用に問題はないと述べているが、給与の安い中小の航空会社は離職率が高い。アメリカン航空CEO(最高経営責任者)のロバート・アイゾムは6月に17%の賃上げを提示した。これによって、14.5%の賃上げを検討していたユナイテッド航空の交渉は混乱した。この17%の賃上げでアメリカン航空とユナイテッド航空のパイロットの賃金は契約終了時に同水準になるはずだった、とジッシャーは指摘した。

航空会社は「互いを見続けている」とジッシャーはいう。「誰も一番になりたがらない。あまりに賃上げ率が低いと反発を受ける。ユナイテッド航空では、組合員が『とんでもない』と言っている」。ジッシャーは、アイゾムとユナイテッド航空CEOのスコット・カービー(元アメリカン航空社長)の対立に言及した。

アメリカン航空のパイロットは1998年以来、正式な賃上げ交渉をしていない、とジッシャーはいう。2003年の倒産時には給与が23%カットされ、2013年のUSエアウェイズとの合併後の契約で一部の項目が復活した。また、2017年には賃上げを実施し、給与を他の航空会社と同等にした。

APAによると、現在アメリカン航空では月80時間飛行する12年目のナローボディ機の機長の基本給は年間26万7700ドル(約3700万円)、月80時間飛行する12年目のワイドボディ機の機長の基本給は年間32万9000ドル(約4500万円)だ。

アメリカン航空の広報担当者は「2024年まで16.9%の基本給の引き上げと、日当や訓練給など他の多くの賃金構成要素の引き上げ、すべての勤務フライトの振替に50%の割増を提示した」と述べた。アメリカン航空によると、この協定の終了時までのトップクラスのナローボディ機の機長の給与は年間約34万ドル(約4700万円)、トップクラスのワイドボディ機の機長は年間約42万5000ドル(約5800万円)で、さらに退職金と利益分配金が追加されるという。
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翻訳=溝口慈子

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