しかし心理科学の最新研究は、人は完璧を追求するために高い代償を払っていることを示唆している。完璧主義が私たちに与える3つの心理的なダメージをご紹介する。
完璧主義は抑うつにつながる
完璧とは何かについて、私たちは一定の認識をもっているが、心理学研究では完璧主義的な性格特性を以下の3つのカテゴリーに分類している。
1. 自己志向的完璧主義:自身の完璧を求める傾向
2. 他者志向的完璧主義:他者の完璧を求める傾向
3. 社会規定的完璧主義:他者から完璧であることを求められていると信じる傾向
ある最新研究は、完璧主義を称賛されるべき、あるいは目標とするべき特性だと考えている人たちに警鐘を鳴らしている。ほとんどの場合、完璧主義は抑うつにつながり、それは完璧主義のタイプによらない。これは、完璧主義的傾向のような問題ある有害な傾向は、たとえそれが前向きな結果をもたらすとしても見過ごしてはならないという警告と捉えるべきだ。
「私たちの発見は人がなぜ、不完全さという厳しい現実とその追求にともなう高い代償にもかかわらず、完璧を追い求めるのかを解明する道筋に光を当てるものです」と心理学者で共著者のカテリナ・ルニックは説明する。
完璧主義は人を孤独にする
完璧主義は、さらに3つの「自己表現」スタイルに分類できる。完璧主義者が、他者に対して自身を表現する方法だ。
1. 完璧主義的自己提示とは、自己の才能や能力を他人に印象づけようとする積極的行動
2. Non-display of imperfections(NDP)とは、不完全な自分を見せない、例えば自分の欠点を暴くような活動への参加を避ける行動
3. Non-disclosure of imperfections(NDC)とは、自分の不完全さを口にしない、たとえば自分の失敗や困難なことについて話すのを避ける行動
完璧主義がどのようなかたちで現れるとしても、時間とともに社会的孤立へとつながることが多い。完璧主義者は自らに課した非現実的な期待を満たすためにあらゆる努力を惜しまないため、その過程で自分と他人を隔離してしまう。
--{完璧主義は子どもに遺伝することがある}--
一方、自分は他の人たちよりも優れている、能力が高いのだと自らを切り離す行為は、完璧主義の本質であり、孤立は自然な成り行きである。
「他人の承認を得るために、完璧主義の人たちが自らを表現することがよくありますが、こうした自己演出のスタイルが裏目に出ることがあります」とルニックは説明する。「自己顕示欲が強い人は他人からよそよそしく、不誠実で、好ましくない人間だと見られかねないためです。当然ながら、弱点を他人に見せようとしないことは、人と有意義なつながりを形成する妨げになります。これはやがて深い孤立感と疎外感につながります」
完璧主義は子どもに遺伝することがある
心理学者のマーティン・スミスとサイモン・シェリーは最近の研究で、上を目指すようにと執拗に働きかける親を持つ子どもたちほど自己中心的、他者中心的および社会的規定による完璧主義の傾向が強くなりやすいことを発見した。
「要求が多く過度に批判的な親は、完璧主義の子どもを育てます。特に超厳格で要求が多く支配的な親は、他人が自分に失望していると感じる自己批判的で要求が多く、完璧主義的な子どもを育てます」とシェリーはいう。
自分が完璧主義者であるかもしれない人や、知らぬ間にこの特質を子どもに伝えてしまうことを恐れている人たちのために、心理学者たちは以下のアドバイスをくれた。
1. 完璧主義が特に他人との関係において、どのように自分を邪魔しているかを考えてみること。完璧主義の追求を止めることで得られる利益を求めるために、次のような質問を自分にしてみよう。「好きなことをする時間は増えますか?」「仕事を始めたり、やり遂げることは簡単になりますか?」「配偶者やパートナーともっとうまくいくようになりますか?」
2. 意図的に失敗したり不完全に実行する計画を立てる「行動実験」をやってみる。この「実験」の一環として、失敗したら何が起きるかを予測し、実際に何が起きるかを最後まで見届ける計画を立てる。多くの人が、空が落ちてくることはないと知り、不完全を受け入れる自由についていうべきことがたくさんあることに驚く。
3. あなたは何をするかだけではなく、ありのままの姿も評価していることを子どもたちに伝えよう。できるだけ管理や批判をせず、過保護にならないようにすること。子どもたちに、失敗を乗り越えてそこから学ぶことを教えよう。そして完璧を追求することよりも、勤勉と規律を守ることを重視しよう。
(forbes.com 原文)