では、サステナビリティに向けたブランドAの取り組みに、競合他社が追随しなかった場合はどうなるだろうか。もしかするとブランドAは、顧客の支持を受けて、市場シェアを拡大するかもしれない。その場合、売上総利益率は下がったとしても、売上と顧客獲得数は増えることになる。長い目で見れば、ブランドAの勝ちだ。
サステナビリティを求める消費者の要望に、企業が耳を貸さなかった場合、短期的に見れば売上総利益が5%上昇する可能性がある一方で、サステナビリティに取り組む道を選んだ他社に負けるリスクがある。また、長期的には、顧客基盤と売上を失う恐れもある。
こうした難問を前に、小売店やブランド、メーカーはどうしたらいいのだろうか。
どちらか一方の道に進んで対応するよりも、戦略をあれこれ試行錯誤して、消費者の反応を理解し予測するほうが、はるかに優れたやり方であり、リスクも回避しやすいのは明らかだ。
とはいうものの、消費者は自らが何を求めているのかをわかっておらず、企業側が消費者のためにそれを決めるべきだと考える企業幹部はいまだに多い。たしかに、企業幹部や意思決定者に決断を下す責任があるということはそのとおりであり、そうすべきだ。しかし企業側は、消費者が適切な判断を下せるよう、出来る限り優れた事実とデータを提供すべきだと、筆者は考える。
消費者の考えに耳を傾け、理解するうえで何よりも大事なのは、テストを繰り返し行うことだ。そうしなければ、競争で優位に立てず、リスクもはるかに大きくなるだろう。