ただしこの調査では、「サステナビリティにかかるコスト」については、消費者がお金を余分に出してこれを負担することに乗り気ではないことも明らかになっている。
この調査は、小売業者が、サステナビリティとは何かについて、消費者に対して十分な情報を提供していないことを示唆している。消費者がサステナビリティを正しく見極め、サステナブルな取り組みや製品と適切に関わっていけるようにする方法について、小売業者の側の啓蒙活動が不十分なのだ。
ただし、上記のような結果が出ても驚くにはあたらない。そしてこうした状況は、次のような問いにつながる。小売店やブランドは、たとえ消費者側に、サステナブルな製品のためにお金を余分に出そうという積極性がなくても、サステナブルな未来へ向けて歩み続けようとする強い意志があるのだろうか。あるいは、サステナビリティは、単なる興味深いトレンドのひとつであって、過ぎ去るのを待つだけなのだろうか。
起こりうる状況を占う上で何よりも有益なのは、小売店やブランドがサステナブルな未来のために投資した場合(あるいは投資しなかった場合)にはどうなるのか、競争環境が変化した場合に、消費者がどう反応するとみられるのか、といった点を検討することだ。では、例を挙げながら考えていこう。
仮に、Aというブランドが、サステナビリティに向けた取り組みを続けていくと決めたとしよう。そして、サステナブルな製品を販売するために、コストのうち自社が吸収する分を5%増やし、消費者はブランドAの製品を同じ価格で購入し続けたとする。この場合、ブランドAは、売上総利益の5%を失うことになる。これは、競争環境が変化しないことを前提としている。
次に、ブランドAの競合他社も同じく、サステナビリティに向けた取り組みを行うと決めたとしよう。よくあるように、製造技術が進歩したと仮定すれば、コストが全般的に減少し、以前の均衡がそのまま保たれることになるだろう。唯一の違いは、消費者と社会全体が恩恵を受けることだ。