30U30

2022.08.28

「世界を変える10人」に選ばれたロボティクス女子高生、立崎乃衣

立崎乃衣(ロボットクリエイター)

日本発「世界を変える30歳未満」の30人を選出するプロジェクト「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年の最年少受賞者である立崎乃衣(18)は、9歳からロボット制作を始め、国際ロボットコンテストを通じてファンディングからプロジェクトリードまで経験。社会課題を解決する次世代リーダーとして期待される存在であり、今回、テクノロジー&サイエンス部門での受賞を果たした。



2020年、高校1年生の立崎乃衣は、レノボ・グループから世界を変える若手女性10人に光を当てるプロジェクトに選ばれた。世界的なロボットコンテストで3年連続入賞しただけが理由ではない。彼女はロボット製作の経験を通じて、実は「非ロボット」をコロナ禍でつくったことが評価されたのだ。

9歳で初めてロボットを自作して楽しさにのめり込み、中学1年生で現在のロボコンチームに加入。メンバー最年少でロボットの大部分の設計を担当した。

自身の顕在能力は「同じ作業に集中して諦めずにやり抜くこと」。朝5時から夜10時まで休憩せずに作業を続けることが何度もあったという。チームの活動を通して得た教訓を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「失敗を重ねて学んだことがあります。設計担当者の私がひとり遅れると、チーム全体で『ロボットがつくり終わらない!』という事態になりかねず、責任重大です。だから『想定外のことは必ず起こる』と想定して、計画を立てることが重要だと気づきました」

エンジニアとして社会貢献を目指す


立崎のチームが参加してきたのは、中高生向けのロボット競技会「FRC(ファースト・ロボティクス・コンペティション)」。約60kgの大型ロボットをつくり、米国の会場で競い合う。技術一辺倒の催しでなく、FRCはビジネスコンテストにも近い。数百万円かかる年間の活動費も、中高生自らスポンサーを探してまかなうからだ。

資金調達の苦労やプロジェクトを先導する責任など、起業家になってから味わう経験を疑似的に積んだ。そこで身につけた「全体像の把握」と「先読み能力」、そして「やり抜く力」が意外なかたちで発揮される。

2020年のFRCが、コロナ禍で書類審査のみに縮小された。そのとき、ものづくりで培った力を生かして立崎は行動する。フェイスシールドを製作する団体を個人で設立したのだ。ロボコンのチームも引き入れ、医療事業者へ2,000個以上を寄付。そうした「非ロボット」領域の活動が、前出のレノボ・グループの評価となった。

翌年には、非常時のスムーズな流通を実現するプラットフォームの構築を目指す団体を有志で設立。ロボット製作者として活動するかたわら、ロボティクスの知見を社会へ適用する意識を高めていった。

現在、米国の工学系大学を目指して英語を猛勉強中。「ものづくりだけにとどまらない。社会課題の解決も先導していけるリーダーとしてのエンジニアを目指したい」。その片鱗をインタビュー時の落ち着いた態度に覗かせていた。

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たつざき・のい◎2004年、埼玉県生まれ。渋谷教育学園幕張高等学校3年生。国際ロボコンチーム「SAKURA Tempesta」前チームリーダー。孫正義育英財団5期生。

ジャケット209,000円、パンツ100,100円(ともにエイトン/エイトン青山 03-6427-6335)シューズはスタイリスト私物

文=神吉弘邦 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=堀口和貢

この記事は 「Forbes JAPAN No.098 2022年10月号(2022/8/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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