最近、そんな質問を受けた。この質問に答えるにあたって、ちょっとしたエピソードを紹介したい。
人が言語を自然に学びネイティブレベルで使えるようになるには、14歳までにその言語の環境に身を置くのが理想だと言われている。14歳までは耳から自然に学べるが、15歳以降はそれがなかなか難しく、ネイティブスピーカーの域に達するのは難しいそうだ。
僕が海外に出て初めて英語の環境に身を置いたとき、僕はすでに16歳をすぎていた。とはいえコミュニケーションを取れる程度には英語を身につけ、ヨーロッパのインターナショナルスクールを無事卒業した後は、アメリカの大学に進学した。
大学1年生の英文科の授業で、毎週5ページの論文を書き、生徒同士でお互いに読み合い、クラス内で議論をする機会があった。その授業で僕の番が回ってきた時、クラスの生徒が僕の論文に対して放った言葉は今でも忘れない。
「この人の知能を疑う」
高校をインターナショナルスクールで過ごしただけの僕の英語は、ネイティブの大学生がそう言い放つほどに拙いものだったのだ。40代になった今でも、正直自分の英語にハンディキャップがあることは否めない。日本人としてのアクセントが未だに残っている。
僕にとって、「言語の壁」は高いものだった。この他にも、人種的マイノリティであること、就労ビザの取得に苦労がついてまわることなど、アメリカで暮らす日本人としてのハンデは山ほどあった。
それにもかかわらず20年以上海外で仕事をし、結果を出してこれたのはなぜだろうか。それは、これらのハンデを補うことができるだけの、別の経験と力が役に立っていたからであると、今になって理解できた。
その力を一言で表すならば「Craftmanship(技巧力)」。僕の土台を作ったのは、20代のときに何かをつくり続けた経験だろう。これが、冒頭の質問への答えになる。
「作り手経営者」の強み
ここで今度は僕から皆さんに質問をしたい。Airbnb、Instagram、Nikeの共通点は何かと聞かれたら、何を思い浮かべるだろう?
Instagramの共同創業者ケビン・シストロム(Getty Images)
もちろんどれも大成功を納めている羨望的存在の企業であるが、それ以外にも共通点がある。それは、創業者か経営者が、エンジニアもしくはデザイナーだったことにある。
つまり「作り手」だったということだ。
例えばAirbnbの共同創設者、現CEOのブライアン・チェスキー氏は、アメリカでトップクラスの美大ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの出身だ。Instagramの共同創業者ケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏はコンピューターサイエンスの学歴を持っており、プログラミングの技術を持ち合わせている。また長年Nikeの最高経営責任者を務めていたマーク・パーカー氏はデザイン畑の出身だ。